2025年9月4日木曜日

構図

構図 代表作(クリックで拡大) 考え方・解説 関連作リンク
二分割構図 ミケランジェロ《アダムの創造》
ミケランジェロ《アダムの創造》
画面を上下/左右にくっきり分け、天的領域と地上的領域、あるいは神性と人間性など意味の対立を一撃で見せます。大胆な割り切りがドラマを生む一方、被写体の真ん中断ちは静的になりすぎる欠点も。水平線や雲・建築など自然な境界を二分線として借りると強く決まります。 ・ミケランジェロ《光と闇の分離》
別パネルの対照
・天/地の分節が明快な祭壇画の例
三分割法 レオナルド《最後の晩餐》
レオナルド《最後の晩餐》
画面を縦横に三等分し、交点や分割線付近に主題を置く定石。視線の移動が自然で、群像でも秩序が保てます。レオナルド作では地平線と卓が横の三分線、キリストの頭部が中央垂直線に近接し、さらに透視図法の消失点が集中を助けます(黄金比との関連もしばしば言及されますが、まずは三分の安定透視の収斂を押さえると実務的)。 ・ピエロ《キリストの洗礼》の厳密な整序
(縦横の端正な割り)
・ティツィアーノ《聖母被昇天》の縦三層
(地上/聖人/天上)
日の丸構図(中央配置) ヤン・ファン・エイク《アルノルフィーニ夫妻》
ヤン・ファン・エイク《アルノルフィーニ夫妻》
主体を迷いなく中央に据える方式。宗教画ではイコン的な正面性と荘厳さを生みます。中央に置くだけだと平板になりがちなので、周囲の装飾や光源・床目地で奥行きと象徴を補強すると格が上がります。 ・レオナルド《サルバトール・ムンディ》
正面の救世主像
・ジョット《オンニサンティの聖母》
玉座の中央支配
三角構図 ラファエロ《システィーナの聖母》
ラファエロ《システィーナの聖母》
頂点(聖母・キリスト)から両脇へと安定の力学をつくる古典構図。信仰画では神学的秩序=視覚的安定として機能します。静的になりすぎる場合は、布や視線・ジェスチャーで対流をつくると生気が生まれます。 ・ラファエロ《草原の聖母》
(三角の典型)
・レオナルド《岩窟の聖母》
(三角+洞窟の囲み)
対角線構図 カラヴァッジョ《聖マタイの召命》
カラヴァッジョ《聖マタイの召命》
強い斜めの力が時間性・劇性を生みます。カラヴァッジョは斜光そのものを「対角線」として使い、光=恩寵の向きで解釈を導きます。斜めが過剰だと不安定に見えるので、反対向きの副対角や水平要素で釣り合いをとるのがコツ。 ・《サウロの回心》
(馬体がつくる対角)
・《聖ペテロの磔刑》
(十字の傾斜)
放射線構図 ベルニーニ《聖テレサの法悦》
ベルニーニ《聖テレサの法悦》
一点に収束する線群で神秘体験や啓示の瞬間を視覚化。建築・彫刻・光(本物の天窓光や金の光条)を総合して視線+感情を一点へ集束させます。線が散漫だと効果が薄まるので、中心(聖名・聖人・聖体)を明確に。 ・ガウッリ《御名の勝利》(イエズス会堂天井)
(光条の渦)
トンネル構図(フレーミング) ヤン/フーベルト・ファン・アイク《ゲントの祭壇画(開扉)》
ファン・アイク兄弟《ゲントの祭壇画(開扉)》
アーチや柱列、洞窟など囲いを前景に置いて、奥の聖域へ誘う手法。額縁の中にもう一つの額縁をつくるイメージで、視線を導き、深度も稼げます。前景が暗/後景が明の明度差を併用すると効果大。 ・フラ・アンジェリコ《受胎告知(サン・マルコ)》
回廊の列柱が額縁化
サンドイッチ構図 ルーベンス《昇架のキリスト》
ルーベンス《昇架のキリスト》
主題(キリストなど)を両側の群像で挟み込む構成。視線は自然に中央へ圧縮され、緊迫感が高まります。中央に空白(呼吸)を残すと窮屈さを避けられます。左右の量塊の明暗・色量を揃えるのも安定のコツ。 ・《十字架降下》(同聖堂の対作品)
(大三連作)
・カラヴァッジョ《埋葬》
(上下からの圧)
シンメトリー構図 シナイのキリスト(パンタクラトール)
《キリスト・パンタクラトール(シナイ修道院)》
左右対称は永遠・秩序・権威の表象。正面性と軸線を厳密にとるほど宗教的威厳が強まります。単調にならぬよう、目・口・手のわずかな非対称で生気を宿らせるのも古典的技法です。 ・チェファルー大聖堂のパンタクラトール
ビザンティン・モザイク
・アヤソフィアのキリスト像
荘厳な正面性
C字構図 ムリーリョ《栄光の聖母子》
ムリーリョ《栄光の聖母子》
聖母の身振りと衣、雲や天使群でC字の抱擁をつくり、中心の幼子を包み込みます。柔らかい母性的リズムが得意ですが、甘く流れすぎないように、反対側へ小さなカウンターカーブや水平の留めを置くと引き締まります。 ・ボッティチェリ《マニフィカトの聖母》
(曲線の抱擁)
・《ザクロの聖母》
(円形とCの併用)