ディープステートや日本の財務省信仰に関する陰謀論は、特定の経済学派同士の代理戦争とも捉えられる。ここではビュオクラシー、すなわち官僚制度批判として各学派の立場を整理してみよう。アメリカでは、ディープステートの支配構造はケインズ経済学の曲解に根ざしているとされ、これを仮想敵とするのがオーストリア学派やMMTである。日本ではプライマリーバランス至上主義が支配しており、これに異を唱えるのがMMTを中心とした積極財政派だ。
税制について、支配側は財政健全化の名のもとに増税を推進する。一方、MMTは税を財源とせず、インフレ調整の道具と位置づける。オーストリア学派は減税と小さな政府を理想とする。通貨政策では、支配側は発行量を抑制し政府債務を問題視する。MMTは政府支出を景気安定の柱とし、通貨発行を肯定する。オーストリア学派は通貨の乱発を禁じ、市場本位を重んじる。
景気対策では、支配側は財政均衡と景気刺激の狭間で揺れ、積極策を打ち出しづらい。MMTは雇用創出を最優先し、財政出動を肯定する。オーストリア学派は景気循環を自然な浄化作用と捉え、政府介入を否定する。株式市場への関与については、支配側が市場安定化を名目に介入を正当化するのに対し、MMTは必要に応じて公共部門を拡張し、オーストリア学派は市場の自由な機能に委ねる。
このように、ディープステート論も財務カルト論も、官僚主導の経済運営への根源的な不信を共有している。表向きの理論の裏で、異なる経済思想がせめぎ合っている