# 概要(Executive Summary)
街角で売られる低価格なキーチェーン型ブロックゲーム機は、基板上にワイヤボンディングした半導体ダイをエポキシ封止したCOB(Chip-On-Board)マイクロコントローラを搭載し、内部にあらかじめマスクROM(或いはOTPメモリ)で格納したゲームプログラムを持つ。これらのチップは一般に4ビット(8051系に類似)または8ビット相当の独自アーキテクチャで、低速(内部RC発振で数MHz以下)に動作する。メモリ構成は数KB級のプログラムROMと数十~百数十バイトのデータRAM(例:Holtek社HTG13J0でROM 8KB・RAM 80Byte、Aplus社APU429でROM 8KB・RAM 96~192Byte)程度、I/Oピンは十数本(ボタン入力・LCDドライバ線など)です。LCDドライバは数百セグメント(例:40×8=320セグメント、8×42=336セグメント)を制御でき、1音ブザー制御や低電力モード機能を内蔵します。電源は一般に1.5V単三電池×2(3V)やLR44ボタン電池×2(3V)などで、基板・筐体はFR-4や薄型樹脂で低コストに製造されます。製造プロセスでは、設計済みチップ(例:Holtek、Megawin等が設計)がファウンドリでダイ製造され、COB工場でダイ接着・ワイヤボンディング・エポキシ封止が行われる。その後、基板実装工場(PCBアセンブリ)でプリント基板や部品実装を経て、最終的に玩具OEM/ODMメーカーで筐体組立・検査されます。最終製品は中国の輸出商社・問屋を経由し、東南アジア・アフリカ・東欧など世界各地の雑貨店や露店、ECで販売されます(図参照)。大量発注時には1台あたり約0.80USD程度まで単価が下がる例が報告されており、個々の部品原価はLCDモジュール約0.05–0.15USD、COB IC約0.03–0.10USD、ブザー約0.01–0.05USD、PCB+実装費約0.05–0.15USD程度と推定されます(以下表参照)。なお、実際の仕様・コストは設計会社・モデルや部品選択により大きく変動する可能性があります。
## 代表的な仕様(例)
| 項目 | 仕様(典型例) |
|--------------------|---------------------------------------------------------------------------|
| CPUコア | 4ビットRISC系(8051互換的)または8ビットカスタム(Holtek, Megawin 等) |
| 動作クロック | 内部RC発振器、約0.5~1MHz 程度 |
| プログラムROM | 数~十数KB(マスクROM、例: 8KB) |
| データRAM | 数十~百数十バイト(例: 80B~192B) |
| I/Oポート | 約10~20本(ボタン・リセット・共通/セグメントLCDライン等) |
| LCDドライバ | 数百セグメント対応(例: 40×8=320セグメント、8×42=336セグメント)|
| ブザー/音源 | 内蔵(単音ビープ音, PWM出力など) |
| 電源 | 3V(1.5V単三×2またはLR44×2) |
| 外部メモリ | なし(全データ・プログラム内蔵) |
| パッケージ・実装 | 基板上へのダイ直付けCOB(ワイヤボンディング+黒色エポキシ封止) |
| 基板構造 | 片面または両面プリント基板(低コストFR-4、ガラスエポキシ等) |
| その他 | キーマトリクススキャン機能, 省電力HALT/WAKE機能等 |
## 製造・組立プロセス
COBチップの製造は、まず半導体設計会社(例:Holtek、Megawinなど)が特定用途向けにマスクROMプログラムを組み込んだマイクロコントローラを設計し、ファウンドリ(半導体工場)でシリコンウェーハに製造します。その後、完成したダイは基板に接着され、細線(ワイヤボンディング)で基板配線と接続されます。最後に黒色エポキシで封止してチップを保護するCOBパッケージ形態となります。これによりICパッケージコストを下げ、サイズも最小化します。基板は簡易な片面または両面のプリント基板が用いられ、表面実装や挿入実装で抵抗やコンデンサ、ブザーなどを実装します。製品組立では、前述COB搭載基板に液晶モジュール(ガラス板に印刷されたセグメント)やスピーカ・ボタン電池ホルダを組み込み、プラスチック外装に固定します。製造段階では動作テストが行われ、EEPROMではなくマスクROMを用いる場合は出荷前にテスト治具で正常動作を確認して出荷します(レトロゲーム系は常に同じプログラムであることが多い)。なお、一部情報筋ではダイ内部にEPROM風の領域が見られたとの報告もあり、設計によっては一度だけ書き込み可能なメモリが使われることも示唆されています。
## サプライチェーンフロー(商流)
```mermaid
flowchart LR
A[チップ設計・開発\n(例:Holtek, Megawin 等)] --> B[ファウンドリ\n(半導体製造)]
B --> C[COB組立工場\n(ダイ接着・ワイヤボンディング・封止)]
C --> D[PCB実装工場\n(基板製造・部品実装)]
D --> E[OEM/ODMメーカー\n(ゲーム機組立・品質検査)]
E --> F[卸売・輸出業者]
F --> G[小売店・露店・ECサイト]
```
上図のように、まず半導体開発会社がチップを設計し、ファウンドリでダイを製造します。ダイはCOB組立工場へ送られ、基板上に搭載・封止されます。その後、PCB実装工場で他部品と共に実装し、OEM/ODMメーカーで筐体組立・検査が行われます。完成品は中国の卸売・輸出業者に渡り、東南アジア・アフリカ・欧州などの雑貨店や露店、オンラインマーケットを通じて販売されます。主要メーカー例としては、広東省の深圳・東莞・汕頭周辺に複数のOEM/ODM企業が存在し、総合玩具メーカーが完成品を企画・輸出します。注文数は一般的に数千~数万単位(高額なモデルで数十万台)となり、大ロット時に単価が下がります。
## コスト推定と部品構成
大量生産時の製品単価は約0.80USD前後まで下がるとされ、以下は主要構成要素の概算コスト例です(1台あたり)。実際の数値は発注数量・部品調達条件により変動します。
| 部品・項目 | 概算コスト (1台あたり) |
|----------------|--------------------------|
| COBマイクロコントローラIC | 約0.03–0.10 USD |
| LCDモジュール | 約0.05–0.15 USD |
| ブザー(圧電素子) | 約0.01–0.05 USD |
| PCB基板 (材料+製造) | 約0.03–0.10 USD |
| 実装・検査費 | 約0.05–0.15 USD |
| **合計BOM** | **約0.17–0.55 USD (参考)** |
たとえば、グローバルソースに掲載のモデルでは、5000~9999個で0.85USD、20000個以上で0.80USDといった価格設定がなされており、数万台のロットでは上記BOM合計+梱包・物流費+利ざやで約0.8USD前後と推定されます。少量(10~30台程度)注文では1台約0.7~1.6USDと幅があり、その差は発注量や最終外装材質、検査・送料条件によるものです。また、二次電池(LR44など)は上表に含まず、1台あたり数セント程度のコスト増となります。以上の数値は目安であり、実際にはデザインやパッケージ、ボリュームにより大きく変動する点に注意してください。
**不確実性:** 上記はあくまで典型的な例示であり、OEMによって内部チップや部品選定が異なるため仕様・コストにはばらつきがあります。特にCPUコア、LCDサイズ、ゲーム数、筐体形状などが異なるモデルも多く、それぞれ個別に異なるチップが使われる可能性があります(例:別メーカー製チップや新規設計のマスクROMなど)。また、市場の部品価格や為替変動によりコスト構成比も変わり得る点に留意が必要です。
## 参考文献・資料
- COBパッケージの概要と用途
- Holtek HTG13J0マイクロコントローラデータシート
- Aplus APU429マイクロコントローラデータシート
- Brick Gameハード解析(8051系MCU類似性指摘)
- 量産玩具コンソールの部品仕様例(Globalsources掲載)
- 中国系仕入れサイト掲載価格例
各資料を参照しつつ、上記情報を総合・推定してまとめました。各数値・仕様は公開情報・テアダウン報告等から抽出した典型例であり、実際の製品はこれと異なる場合があります。