本書は、アメリカのエンジニア、クリストファー・ダンによって執筆された。著者は航空機製造や精密機械加工の技術者としての経験を活かし、ギザの大ピラミッドを「発電施設」として再解釈する独自理論を展開している。
ダンの中心仮説はこうだ。ギザの大ピラミッドは墓ではなく、巨大な共振エネルギー装置だった。地下からの地震波や地殻振動を取り込み、構造全体で音響共振を発生。これを内部構造(王の間・大回廊など)で増幅・整流し、高周波エネルギーを生成していたと主張する。さらに、王の間の花崗岩ブロックが圧電効果を生み出し、マイクロ波のような電磁波エネルギーを取り出していた可能性を論じる。
著書内では、ピラミッド内部の寸法精度・花崗岩の硬度・加工痕の分析などが技術的証拠として挙げられる。彼は、これほどの精密加工は当時の青銅工具では不可能であり、未知の高度技術が用いられた可能性を示唆する。さらに、王の間の通気孔(いわゆるシャフト)や各部屋の配置が、エネルギーの流れを制御する「工学的設計」だったと読み解く。
本書は一部のオルタナティブ歴史論者・陰謀論支持者から支持を集め、後の「古代エイリアン説」やピラミッド発電説の重要な典拠となった。しかし、正統派の考古学・工学・物理学者からは強い批判を受けている。批判の主な論点は以下の通り:
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実際に発電装置として機能する物理的根拠が乏しい。
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ピラミッド建設技術に既存技術で説明可能な部分が多い。
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考古学的文献・碑文が一切この機能を示唆していない。
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花崗岩の圧電特性は微弱すぎ、実用出力にならない。
ダン自身は「既存の考古学は技術的視点を軽視している」と主張し、職人としての経験を武器に「物理的にどうやってこれを作ったのか」という点に着目している。
結局のところ『The Giza Power Plant』は、科学的検証よりもロマンと仮説を楽しむ書籍として読むべきと位置づけられている。