1932年の『恐怖城/ホワイト・ゾンビ』で始まったゾンビ映画は、ブードゥー呪術の操り死体で、人肉嗜好はまだ無い。1968年、ジョージ・A・ロメロが『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』で「噛まれると感染」「群れで襲う」現代像を確立し、78年『ゾンビ』で消費社会批判を重ね社会派ジャンルへ。80〜90年代はイタリア製スプラッターと『バタリアン』などゴアとコメディが並走し、ビデオと特殊メイクの発展でゴアが過熱。日本でも深夜帯でカルト作が浸透、ゲーム『バイオハザード』(96年)が映像復興の火種となる。2000年代には『28日後…』(02年)が走る感染者で恐怖を刷新し、スナイダー版『ドーン・オブ・ザ・デッド』と英国製『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04年)がパニックとパロディを両立した。2010年代は韓国『新感染』(16年)や『ゾンビランド』シリーズが家族愛や青春劇を盛り込み、『ウォーキング・デッド』(10年〜)が長尺ドラマ化を牽引。2020年代は配信発の低予算作が増え、北欧『Handling the Undead』や『Apocalypse Z』(24年)が注目され、25年公開予定『28 Years Later』は母子の絆に焦点。近年はAI生成映像やメタバース上映、観客参加型配信など技術が拡張。サブジャンルはパニック、ブラックコメディ、ロマンス、POVファウンドフッテージなど多彩。ゾンビは奴隷制からパンデミックまで時代不安を映すメタファーとなり、観客は極限下の倫理揺らぎと連帯を体験し、恐怖とカタルシスを味わう。普遍性ゆえに国境と予算を超え、スピンオフやゲームまで裾野を拡大し“終わりなき蘇生”を続けている。