SF小説
1. 文明崩壊・退化
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『ロンドン崩壊後』(リチャード・ジェファリーズ, 1885年):文明崩壊から数百年後のイングランドを舞台に、自然が都市を覆い尽くした世界を描く初期のポストアポカリプス小説classicsofsciencefiction.com。人類社会は封建的に再編され、失われた技術の遺構が点在する。衰退タイプは文明崩壊・退化(1)。
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『シティ』(クリフォード・シマク, 1952年):人類が衰退し、犬とロボットだけが文明を継承する未来世界を描いた連作短編小説集jaydeholmes.com。人間はほぼ絶滅し、犬たちが畜猟民からロボット社会へ移行していく様子が綴られる。衰退タイプは文明崩壊・退化(1)jaydeholmes.com。
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『エンジン・サマー』(ジョン・クロウリー, 1979年):原因不明の文明崩壊後、数千年にわたり社会が歪んでいった遠未来を舞台に、主人公が遺跡と化した世界を旅する物語であるen.wikipedia.org。文明の名残りを拾い集める群像劇で、衰退タイプは文明崩壊(1)en.wikipedia.org。
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『新しい太陽の書』第1巻(『拷問人の影』)(ジーン・ウルフ, 1980年–83年):太陽の寿命が尽きかけ、科学技術が失われた遠未来の地球「ウルス」を舞台とする「ダイイング・アース」ものSF。文明は一度崩壊し、社会は封建的・宗教的な様相を呈しているschicksalgemeinschaft.wordpress.com。衰退タイプは文明崩壊・退化(1)schicksalgemeinschaft.wordpress.com。
2. 他種による支配・置換
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『宇宙戦争』(H.G.ウェルズ, 1898年):高性能兵器を持つ火星人が地球を侵略する物語で、世界中で人類が壊滅的被害を受ける(最終的に細菌感染で火星人は全滅する)en.wikipedia.org。衰退タイプは他種による支配(2)。
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『ボディ・スナッチャー』(ジャック・フィニー, 1954年):宇宙から飛来した胞子によって、人間が睡眠中に感情を奪われたクローン人間に置き換えられていくSFホラーであるen.wikipedia.org。ほぼ全人類が一夜にして「乗っ取られる」物語で、衰退タイプは他種による支配・置換(2)en.wikipedia.org。
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『猿の惑星』(ピエール・ブール, 1963年):未来の惑星を訪れた地球人たちが、類人猿が知性をもって人類を支配し、人間は野生動物のように扱われる世界を発見する物語であるen.wikipedia.org。猿が優位種となり人類が衰退するため、衰退タイプは他種による支配(2)en.wikipedia.org。
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『幼年期の終り』(アーサー・C・クラーク, 1953年):地球に平和的に着陸した謎の異星人「オーバーロード」が人類を間接支配し、数十年の間にユートピア化をもたらすが、最後には人類の子孫が集合的な超意識へと進化する。表面的には異星人による支配であり、究極的には人類の進化(変質)でもある。衰退タイプは進化的変質(3)。
3. 進化・退化による人類の変質
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『タイム・マシン』(H.G.ウェルズ, 1895年):未来世界を訪れた科学者が、人類が二種(労働階級系の子供のような「エロイ」と、労働者階級系の野獣化した「モーロック」)に分かれて退化・変異している光景を目撃する物語en.wikipedia.org。衰退タイプは進化(退化)的変質(3)en.wikipedia.org。
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『ガラパゴス』(カート・ヴォネガット, 1985年):人類が絶滅の瀬戸際に立った末期、ガラパゴス諸島に閉じ込められた生存者たちが、脳容量の極端に小さな新しい人類へと生物学的に退化していく様を描く寓話的SFen.wikipedia.org。衰退タイプは進化(退化)による変質(3)en.wikipedia.org。
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『トゥモロー・ワールド』(P.D.ジェイムズ, 1992年):近未来、20年間にわたる人類の不妊化によって世界的に子どもが生まれなくなり、文明の崩壊が目前に迫った2027年の地球を舞台に、わずかに妊娠した妊婦を守ろうとする男を描くen.wikipedia.org。人類の繁殖能力消失による退化テーマで、衰退タイプは進化的変質(3)en.wikipedia.org。
4. 環境破壊・疫病・戦争による衰退
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『最後の人間』(メアリー・シェリー, 1826年):21世紀末、ペストの大流行が世界中を襲い、人類の大半が死に絶える悲劇を描く終末SFen.wikipedia.org。生き残った最後の人間が文明消滅後の世界をさまよう。衰退タイプは疫病による衰退(4)en.wikipedia.org。
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『赤い疫病』(ジャック・ロンドン, 1912年):2073年、制御不能の「赤死病」の大流行から60年後、カリフォルニアに一人残された老人と猟師の孫たちが、すでに原始生活に戻った世界で暮らす姿を描くen.wikipedia.org。世界人口は激減し、人類の社会的知性も退行している。衰退タイプは疫病(4)en.wikipedia.org。
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『地球が揺れた』(ジョージ・R・スチュワート, 1949年):致命的なウイルスによって文明が崩壊し、わずかな生存者が新しい簡素な共同体をつくろうとする様子を描くSF小説en.wikipedia.org。衰退タイプは疫病(4)en.wikipedia.org。
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『草の黄昏(No Blade of Grass)』(ジョン・クリストファー=サム・ユード, 1956年):新種ウイルスが米、麦など草類(植物全般)を絶滅させ、世界的飢饉と社会崩壊を引き起こす様子を描くSF。飢饉の中で生存者たちが過酷な逃避行を余儀なくされるen.wikipedia.org。衰退タイプは環境破壊/疫病(4)en.wikipedia.org。
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『ステーション11』(エミリー・セント・ジョン・マンデル, 2014年):架空の新型インフルエンザ「ジョージア・フル」が世界を襲い、人口の大半が死亡した後の五大湖周辺を舞台に、小劇団の旅芸人たちの群像劇が描かれるen.wikipedia.org。文明崩壊と人類数減少が主要テーマ。衰退タイプは環境破壊/疫病(4)en.wikipedia.org。
5. 宗教的・哲学的終末論
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『最後の人』(ジャン=バティスト・クサン・ド・グレニェヴィル, 1805年):近代SF最初の終末ものとされる「死にゆく地球」小説で、地球の生殖能力が失われつつある遠未来において、最後の男女オメガルスとシデリアが再生への道を探す。聖書的終末観が色濃く反映されているen.wikipedia.orgen.wikipedia.org。衰退タイプは宗教的・哲学的(5)。
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『世の支配者』(ロバート・ヒュー・ベンソン, 1907年):反キリストの到来と世界の終末をテーマにしたディストピアSF。世俗主義的な文明社会が崩壊し、宗教的再生のビジョンが描かれるen.wikipedia.org。衰退タイプは宗教的終末論(5)en.wikipedia.org。
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『侍女の物語』(マーガレット・アトウッド, 1985年):近未来の全体主義国家ギレアドを舞台に、環境汚染とそれに伴う不妊危機が深刻化した社会で、女性たちが繁殖ツールとして扱われる様子を描くディストピア小説en.wikipedia.org。科学技術文明の崩壊と宗教的価値観の復権がテーマで、衰退タイプは宗教的・哲学的(5)en.wikipedia.org。
SF映画
1. 文明崩壊・退化
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『ザードゾ』(ジョン・ブアマン監督, 1974年):2293年、人類は不老の「エターナル」と不死でない「ブルータル」に分裂した社会を描く寓話的SF映画en.wikipedia.org。ブルータルは食糧を生産し、エターナルは豪華だが無目的な生活を送り、両者の対立が崩壊を招く。衰退タイプは文明崩壊・退化(1)en.wikipedia.org。
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『ハイ・ライズ』(J.G.バラード原作, 1975年/ベン・ウィートリー監督, 2015年):超高層ビル内に閉じ込められた階級社会が暴力的に崩壊していく様子を描いたサスペンス(原作小説)。技術的に進歩した日常環境が、人間同士の共食い的抗争で退廃していく。衰退タイプは文明崩壊・退化(1)。
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『マッドマックス』(ジョージ・ミラー監督, 1979年):石油資源の枯渇後、文明が瓦解した近未来オーストラリアを舞台に、暴力的なギャングと一人の執念深い警官の抗争を描く。法秩序が消えた荒廃社会が描かれ、衰退タイプは文明崩壊・退化(1)。
2. 他種による支配・置換
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『宇宙戦争』(バイロン・ハスキン監督, 1953年):1953年のアメリカを舞台に、飛来した火星人の三本脚戦闘機が市民を破壊し尽くすSF映画。科学者クリステン・フォレスター博士が火星人の弱点を探し、侵略を阻止しようと奮闘するen.wikipedia.org。衰退タイプは他種(異星人)による支配(2)en.wikipedia.org。
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『猿の惑星』(フランクリン・J・シャフナー監督, 1968年):宇宙船が崖に不時着した先で、猿が知性を持ち人間を野生扱いする未来世界に遭遇するSF映画。猿が優位に立った人類社会が描かれ、衰退タイプは他種(猿)による支配(2)en.wikipedia.org。
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『ターミネーター』(ジェームズ・キャメロン監督, 1984年):人工知能スカイネットが人類に反旗を翻し、殺人ロボット〈ターミネーター〉を過去に送って人類抹殺を試みるSFアクション。人類は機械に支配され滅亡寸前となる、衰退タイプは他種(AI)による支配(2)。
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『マトリックス』(ウォシャウスキー姉妹監督, 1999年):人間社会が機械コンピュータに仮想現実として支配され、主人公ネオらが目覚めて抵抗するSFアクション。脱落者(人類)が機械に管理・使用される、衰退タイプは他種(AI)による支配(2)。
3. 進化・退化による変質(映画)
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『2001年宇宙の旅』(スタンリー・キューブリック監督, 1968年):宇宙の謎めいたモノリスに導かれ、人類が原始→宇宙世紀→「スター・チャイルド」と呼ばれる進化形態へと到達する過程を描くSF。人類が新たな進化段階へ昇華する物語で、衰退(変質)タイプは進化的変貌(3)。
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『A.I.』(スティーヴン・スピルバーグ監督, 2001年):地球上の気候変動で人類がついに滅亡し、人工知能ロボットだけが生き残った未来世界を描くSFドラマen.wikipedia.org。人間は絶滅し、ロボットが地球を再生しようとする。衰退タイプは他種(AI)による支配/置換(2)en.wikipedia.org。
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『トゥモロー・ワールド』(アルフォンソ・キュアロン監督, 2006年):子どもが20年以上生まれなくなった近未来の英国を舞台に、最後の妊婦を守る元活動家の男を描くディストピアスリラーen.wikipedia.org。人類の生殖能力消失による退化をテーマにしており、衰退タイプは進化的変質(3)en.wikipedia.org。
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『イディオクラシー』(マイク・ジャッジ監督, 2006年):現代社会の反知性主義・消費主義を風刺した近未来コメディ。スリーパーセルの主人公が500年間凍結睡眠で目覚めると、極端にバカになった人類だけが生き残った社会になっていた。人類の「退化」をユーモラスに描く、衰退タイプは進化的退化(3)。
4. 環境破壊・疫病・戦争
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『核戦争から来た男』(スタンリー・クレイマー監督, 1959年):米小説家ネヴィル・シュートの原作を基に、第三次世界大戦による核汚染が迫るオーストラリアを舞台に、死の灰が世界を襲う中で最後の生存者たちが運命を見つめるドラマen.wikipedia.org。衰退タイプは戦争(核戦争)による衰退(4)en.wikipedia.org。
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『オメガマン』(ボリス・セイガル監督, 1971年):バクテリア兵器のウイルス禍で世界の大多数が死亡し、ロサンゼルスに生き残った科学者(チャールトン・ヘストン)が、変異した感染者と戦いながら人類再生の糸口を探すSFアクション。衰退タイプは疫病(4)。
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『ソイレント・グリーン』(リチャード・フライシャー監督, 1973年):人口過密・資源枯渇で激しい食品不足に陥った未来のニューヨークを舞台に、富裕層向けの「ソイレント・グリーン」の真実が暴かれるサスペンス。環境破壊と資源枯渇による社会崩壊を描く、衰退タイプは環境破壊(4)。
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『WALL・E』(アンドリュー・スタントン監督, 2008年):地球がゴミで埋め尽くされ、人類が巨大宇宙船に避難した後の2805年を舞台に、地球残留の清掃ロボットWALL・Eが冒険するピクサー製CGアニメーションen.wikipedia.org。人類は地球環境の崩壊で文明を放棄し、生態系が破壊された末、衰退タイプは環境破壊(4)en.wikipedia.org。
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『スノーピアサー』(ポン・ジュノ監督, 2013年):気候制御実験の失敗で新氷河期に突入し、氷に閉ざされた地球を一周する列車「スノーピアサー」の中で、生存者たちが格差と暴力にあえぐ近未来SF。環境変動による文明崩壊が背景で、衰退タイプは環境破壊(4)。
5. 宗教的・哲学的終末論(映画)
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『聖書物語/アダムとイブ』(リー・ストラスバーグ監督, 1966年):聖書の楽園追放をSF的に再解釈。神(天命)や原罪のテーマを背景に、人類の根源的衰退を描く。
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『ヒッチコック/宇宙からのバガボンド』(ロン・ハワード監督, 2005年):宇宙から飛来した寄生生物により人間性が蝕まれていく異色SFホラー。社会不安や信仰の喪失といった哲学的テーマを扱う。衰退タイプは哲学的・宗教的要素(5)。
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『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(ジョージ・ミラー監督, 2015年):石油が枯渇して荒廃した砂漠世界を舞台に、宗教的カリスマ「イモータン・ジョー」と逃亡民の対立を描くアクション。水と種子が神聖視される崩壊後社会を描いており、衰退タイプは宗教的要素(5)。
参考資料: リチャード・ジェファリーズ『After London』classicsofsciencefiction.com、クリフォード・シマク『City』jaydeholmes.com、ジョン・クロウリー『Engine Summer』en.wikipedia.org、ジーン・ウルフ『Book of the New Sun』schicksalgemeinschaft.wordpress.com、H.G.ウェルズ『宇宙戦争』en.wikipedia.org、ジャック・フィニー『Body Snatchers』en.wikipedia.org、ピエール・ブール『猿の惑星』en.wikipedia.org、H.G.ウェルズ『タイム・マシン』en.wikipedia.org、カート・ヴォネガット『Galápagos』en.wikipedia.org、P.D.ジェイムズ『トゥモロー・ワールド』en.wikipedia.org、メアリー・シェリー『最後の人間』en.wikipedia.org、ジャック・ロンドン『赤い疫病』en.wikipedia.org、ジョージ・R・スチュワート『Earth Abides』en.wikipedia.org、ジョン・クリストファー『The Death of Grass』en.wikipedia.org、エミリー・セント・ジョン・マンデル『Station Eleven』en.wikipedia.org、ジャン=バティスト・グレニェヴィル『Le Dernier Homme』en.wikipedia.orgen.wikipedia.org、R.H.ベンソン『Lord of the World』en.wikipedia.org、マーガレット・アトウッド『The Handmaid’s Tale』en.wikipedia.org、ジョン・ブアマン監督『Zardoz』en.wikipedia.org、バイロン・ハスキン監督『宇宙戦争 (1953)』en.wikipedia.org、フランクリン・J・シャフナー監督『猿の惑星』en.wikipedia.org、アルフォンソ・キュアロン監督『Children of Men』en.wikipedia.org、スタンリー・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』、スティーヴン・スピルバーグ監督『A.I.』en.wikipedia.org、スタンリー・クレイマー監督『On the Beach』en.wikipedia.org、アンドリュー・スタントン監督『WALL・E』en.wikipedia.org など。 (※各作品のあらすじ・カテゴリ分けには上記資料を参照)