有名な「紅茶実験」は、1920年代のロザムステッド試験場での出来事。生物学者ミュリエル・ブリストルが「ミルクを先に入れたか、紅茶を先に入れたかを飲めば判別できる」と主張し、統計学者R.A.フィッシャーが検証用の実験を設計しました。
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8杯を用意し、4杯はミルク先、4杯は紅茶先。順序は乱数で決め、被験者には伏せる(ランダム化+盲検)。
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参加者は「ミルク先」の4杯を選ぶという事前に定めたルールで判定。
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帰無仮説(区別できない)下で「8杯すべて正解」になる確率は組合せ (48)=70 通り中ただ1通りなので 1/70 ≈ 1.43%。これが有意水準(完全正解のみを合格とする場合)の根拠です。
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結果については伝承では「全問正解」と語られますが、フィッシャーの著書『実験計画法(1935)』自体は結果を書き残しておらず、確実な一次記録は不明とされます。
このエピソードは、
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ランダム化比較、
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事前に決めた判定基準、
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超幾何分布に基づく「フィッシャーの正確確率検定」と p値の考え方、
をコンパクトに示す古典例として、統計学・実験計画法の出発点の一つになりました。
—English (short)—
In the 1920s at Rothamsted, biologist Muriel Bristol claimed she could tell whether milk or tea was poured first. R.A. Fisher designed a blinded, randomized test with 8 cups (4 milk-first, 4 tea-first). Under the null, perfectly classifying all 8 has probability 1/(48)=1/70≈1.43%. The tale often says she succeeded, but Fisher did not record the outcome in his 1935 Design of Experiments. The story crystallizes randomized design, pre-specified decision rules, and Fisher’s exact test.