核融合発電は「人工の太陽」を地上に作り出す試みで、長らく「いつも20年先の夢」と揶揄されてきた。しかし現在、商用化の見通しが従来予想より20年ほど早まり、2030年代実現が現実味を帯びている。日経は「夢の核融合発電が期待より20年早く商用化か」と報じ、国内外で前倒しの動きが顕著だと伝える。日本政府は2025年に「核融合エネルギー革新戦略」を改定し、2030年代の商用化を公式目標に据えた。京大発ベンチャーを含む企業グループは2020年代後半から実証炉を建設し、段階的に電力網への接続を目指す。またスタートアップのHelical Fusionは2034年に世界初の定常運転型炉を起動し、2040年代商用運転を掲げる。海外でも進展が加速しており、米国MIT発のCommonwealth Fusion Systemsは2026年に実証機SPARCを稼働、2030年代前半には商用機ARCで送電を狙う。世界経済フォーラムや金融紙も「2030年代商用化は十分あり得る」と論じ、Fusion Industry Association調査でも企業の3分の1が2031〜35年を目標、さらに3分の1が2036〜40年と回答した。従来の「今世紀後半」という認識から大幅に前倒しされた格好であり、日本・米国を含む複数のプレイヤーが実現に資金と人材を投入している。ただし依然として高温プラズマの長時間安定化、材料劣化、コスト低減といった課題は残る。それでも「核融合は常に未来」という揶揄から脱し、国家戦略と企業の投資が重なり合うことで、現実の電力源として視野に入りつつあるのが現在の状況だ。