海外の評者による論評
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ヘンリー・ビーン(小説家・脚本家) — エリスの描く1980年代消費社会の退廃を、グロテスクも官能も同じ無表情なトーンで描く**「純粋な交換価値のような文体」による風刺として評価。筋らしい筋や明確なキャラクターが不在にもかかわらず、語りの妙によって「読むのを止めることがほとんど不可能」**にしてしまう点を称賛しているlatimes.com。出典: ロサンゼルス・タイムズ紙 書評「SLAYGROUND: AMERICAN PSYCHO」(1991年3月17日)より. 引用: “The miracle of Bret Easton Ellis is that ... with a throwaway nonstyle ... a prose that is pure exchange value, he nevertheless makes it virtually impossible to stop reading.”latimes.com
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フェイ・ウェルドン(小説家・文芸評論家) — エリスを「非常に優れた作家」と評し、本作を**「精巧に統制された、注意深く作られた重要な小説」**だと絶賛theguardian.com。過激な暴力描写に対する批判に対しては「それを大げさに糾弾する我々の側に問題がある」と反論し、誰も罰されず救済もないこの物語が現代社会の冷淡な現実を暴いたものだと評価しているtheguardian.comtheguardian.com。出典: ガーディアン紙 書評「An honest American psycho」(1991年4月25日、著者フェイ・ウェルドン)より. 引用: “American Psycho is a beautifully controlled, careful, important novel which revolves about its own nasty bits. Brilliant.”theguardian.com
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アーヴィン・ウェルシュ(小説家) — 本作を「我々の時代で最も偉大な小説の一つ」と位置づけ、当初物議を醸した過激描写もブラックユーモアと風刺によって現代社会の醜悪さを映し出すために不可欠だったと高く評価しているtheguardian.comtheguardian.com。とりわけ一人称・現在形で語られる文体について、「読者を主人公の視点に引き込み、その暴力と消費社会の客体化の過程に読者を加担させる」巧みな叙述技法だと称賛したtheguardian.com。出典: ガーディアン紙 寄稿記事「American Psycho is a modern classic」(2015年1月10日、著者アーヴィン・ウェルシュ)より. 引用: “the narrative style of American Psycho forces the reader to adopt his point of view... the reader is implicated in both the violence and the objectifying processes of consumer society.”theguardian.com
日本人評者による論評
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村上春樹(小説家) — 「作品としての評価は完全に分かれているけれど、社会的状況の資料としてこれほど自己犠牲的にシニカルで本質的な小説はちょっとない」と述べ、本作の徹底した風刺性を高く評価しているja.wikipedia.org。同時代の話題作『虚栄のかがり火』(トム・ウルフ)と比べても、本作の方がはるかに覚悟を持って社会の本質を暴いていると指摘したja.wikipedia.org。出典: 村上春樹『やがて哀しき外国語』(エッセイ集、講談社、1994年)所収の評論より. 引用: 「作品としての評価は完全にわかれているけれど、社会的状況資料としてこれくらい自己犠牲的にシニカルで本質的な小説はちょっとない」ja.wikipedia.org