2025年10月11日土曜日

カントからソシュール/ヤコブソンに至る流れは、二元対立を「直交的構造」に転換した思想史の道筋として整理できる

 カントからソシュール/ヤコブソンに至る流れは、二元対立を「直交的構造」に転換した思想史の道筋として整理できる。カントは人間の認識を空間と時間という直交的な形式に基づく構成と捉え、経験を主観と客観の座標系上で可能にした。スピノザは精神と延長を対立させず、同一実体の二つの独立な表現とすることで、二元論を平行関係へと移し替えた。ボーアは量子論において波と粒子を排他的ではなく相補的な現象と見なし、観測条件ごとに独立軸が立つと考えた。カッシーラーは人間文化を神話・言語・科学などの象徴形式に分け、互いに干渉しない多軸的世界像を示した。ソシュールとヤコブソンは言語を通時/共時、連辞/選択という直交二軸で分析し、構造そのものを「座標」として捉え直した。こうして哲学的二元論は、互いに独立しながら世界を織りなす直交的構造へと転換された。