2025年10月15日水曜日

ニュートンは勾配で、アインシュタインは曲率で重力を捉えました

 ニュートンの重力像は、平坦なユークリッド空間と絶対時間を前提に、重力をポテンシャルΦの「勾配」で与えるものでした。運動方程式は a = −∇Φ、場の方程式は ∇²Φ = 4πGρ。これが基本図式で、ここには「時空の曲率」は登場しません。ただし月や太陽による潮汐のように、場所ごとの重力の差異は重力ポテンシャルの二階微分、すなわちヘッシアン(潮汐テンソル)∂i∂jΦとして扱われました。したがって“曲率が重力”という幾何学的発想はアインシュタイン以後で、一般相対論が計量と曲率で重力を記述したのです。ニュートンは力学の枠内で“力が軌道を曲げる”と考え、軌道の曲率半径や遠心加速度で整理しましたが、その舞台となる空間自体は終始平坦です。一方、一般相対論では自由落下は力なしの測地線運動とされ、潮汐は曲率成分 R_{0i0j} に対応します。線形近似では R_{0i0j} ≈ ∂i∂jΦ/c² と結びつき、ニュートン的二階微分が幾何学の言葉に昇格します。歴史的には、後にニュートン–カルタン理論が古典重力を接続と曲率で再表現しましたが、これは再解釈です。要するに、ニュートンは勾配で、アインシュタインは曲率で重力を捉えました。。


空間の性質を知りたいときはリーマン、情報を整え分解したいときはヒルベルト

 リーマンとヒルベルトは対立ではなく、役割の異なる二本柱です。比喩で言えば、リーマンは「舞台・地形」、ヒルベルトは「楽器庫・編集室」。リーマンは空間そのものの起伏(長さ・角度・曲率)を語り、最短路や体積の歪みなど“世界の形”を測る学問。ヒルベルトは並んだ数や波・画像といった“中身のデータ”を、内積・直交・投影で整理し、誤差最小の近似や分解を行う学問です。肌感で言うと、リーマンは2D/3D/4D…と「有限のつまみ」を回す感じ、ヒルベルトは無限に並んだつまみ(フーリエ係数や画素)を扱う感じ。座標や基底を替えても、本質が保たれる設計という点も共通します(リーマンはテンソルで“地形の性質”を、ヒルベルトは内積で“長さ・角度”を保存)。実務では両者は密接に組み合わさります。曲がった空間の上で、関数や波(データ)を解析する――ラプラス–ベルトラミやディラック作用素はその典型。まとめれば、空間の性質を知りたいときはリーマン、情報を整え分解したいときはヒルベルト。両者をセットで使うことで、世界の「形」と「中身」を同時に掴めます。


2025年10月14日火曜日

2005年:レイ・カーツワイル『The Singularity Is Near』刊。2029年に人間レベルAI、2045年に特異点という予測を広め、公共圏での議論を加速

 

  • 1950年:アラン・チューリングが「計算する機械と知性」を発表。のちの“Turing Test”の原型を提示し、機械知能を実証的に問う枠組みを示す。 courses.cs.umbc.edu+1

  • 1965年:I.J.グッドが「知能爆発」を提唱。「超知能がより優れた機械を設計し連鎖的に加速する」と論じ、特異点の原型概念を与える。 incompleteideas.net+1

  • 1993年:作家ヴァーナー・ヴィンジが「技術的特異点」を定式化。「数十年以内に人間を超える知能が到来しうる」と主張。 edoras.sdsu.edu+1

  • 2005年:レイ・カーツワイル『The Singularity Is Near』刊。2029年に人間レベルAI、2045年に特異点という予測を広め、公共圏での議論を加速。 Wikipedia+1

  • 2008–2009年Singularity University設立・始動(NASA Ames)。“指数関数的技術”の教育拠点として特異点言説が実務界へ浸透。 NASA+1

ディープラーニング台頭(議論の現実化)

  • 2012年AlexNetがImageNetで大差の勝利、深層学習ブームの決定打。 Wikipedia+1

  • 2016年AlphaGoが李世乭九段に4–1で勝利。汎用知能には遠いが、AI能力の非連続飛躍が可視化。 Wikipedia

  • 2017年:変換器(Transformer)論文。以後の大規模言語モデルの基盤に。 NeurIPS Papers+1

汎用言語モデルの拡大(特異点をめぐる期待と懸念の再燃)

  • 2014年:ニック・ボストロム『Superintelligence』刊。リスクとガバナンス論が主流議題に。 Wikipedia

  • 2020年GPT-3公開。ゼロ/少数ショット能力で社会的関心が急拡大。 Wikipedia

  • 2022年11月ChatGPT公開。一般利用が爆発的に広がり、“特異点の前哨”か否かの世論が活性化。 OpenAI

ガバナンスと国際枠組み(“いつ起きるか”より“どう備えるか”へ)

  • 2023年10月30日:米国**大統領令(EO 14110)**署名。安全・評価・由来表示など包括指針。 The White House+1

  • 2023年11月:英国AI Safety Summitブレッチリー宣言。各国がフロンティアAIのリスク認識を共有。 GOV.UK+1

  • 2024年1月NIST AI RMF 1.0正式公開。リスク管理の実務フレーム提供。 NIST+1

  • 2024年5月AIソウル・サミットソウル宣言等。各国の安全研究所ネットワーク構想などを確認。 Industry.gov.au+1

  • 2024年7月12日/8月1日EU AI法が官報公示→発効。段階的適用で世界初の包括的AI規制に。 Artificial Intelligence Act+1

2025年10月13日月曜日

異世界を示唆・肯定した哲学者と代表リンク一覧

 

哲学者 異世界の概念 解説・原典リンク
プラトン (Plato)古代ギリシャ 感覚界とイデア界の二元論。イデア界は永遠・不変の真実在であり、魂は死後そこに帰る。 🔗 Plato – SEP🔗 Plato: metaphysics – SEP🔗 Plato – IEP
荘子 (Zhuangzi)中国・戦国期 「胡蝶の夢」に代表される夢と現実の不可分性。夢も現実も同等に“世界”として成立。 🔗 Zhuangzi – IEP🔗 Stanford Encyclopedia – Daoism
アレクサンドリアのフィロン (Philo of Alexandria)ヘレニズム期ユダヤ哲学 超越的神と人間界を媒介する「ロゴス(神の理性)」の存在。神的領域への知的到達を説く。 🔗 Philo of Alexandria – IEP🔗 Philo – Wikipedia (EN)
プロティノス (Plotinus)ローマ帝国・3世紀 万物は「一者 (the One)」から流出。魂は観想を通じて一者へ還帰可能。多層的存在界を説く。 🔗 Plotinus – SEP🔗 Plotinus – IEP🔗 Neoplatonism – SEP
イブン・シーナー (Avicenna / Ibn Sina)イスラム哲学 神から能動知性へ流出する宇宙階層。魂は死後に知的至福へ到達。 🔗 Arabic-Islamic Influence – SEP🔗 Avicenna – IEP
マイモニデス (Maimonides)ユダヤ哲学 来世は「知的結合」状態。肉体ではなく、魂が神的知性と一体化する異世界を説く。 🔗 Maimonides – SEP🔗 Maimonides – IEP
ジョージ・バークリ (George Berkeley)近代イギリス 「存在とは知覚されること」。物質は存在せず、神の精神界に保持される。 🔗 Berkeley – SEP🔗 George Berkeley – IEP
イマヌエル・カント (Immanuel Kant)ドイツ啓蒙期 感覚世界(現象界)と、認識不能な「物自体(ヌーメノン界)」の二重構造。 🔗 Kant – SEP🔗 Transcendental Idealism – SEP
デイヴィッド・ルイス (David K. Lewis)現代アメリカ 可能世界は実在する。無数の世界が並行して存在する「モーダル実在論」。 🔗 David K. Lewis – SEP🔗 On the Plurality of Worlds – PhilArchive

「by hap」を含む英語表現

 

  • gutenberg.orgチョーサー『恋の宮廷』(14世紀)より: “If thou do any-thing good by chaunce or by happe, in what thing art thou therof worthy to be commended?”(「もし何か良いことを偶然や運によって為したなら、それについて何の称賛に値すると言えようか」)

  • quod.lib.umich.edu同じくチョーサー『恋の宮廷』より: “Lo! thilke thing doon by hap, by thy wil is nat caused; and therby shulde I thanke or lacke deserve?”(「見よ、運によってなされたその事柄は君の意志によるものではない。それをもって私が感謝される、あるいは責められるに値するのだろうか」)

  • gutenberg.orgチョーサー『花と葉』(『善婦列伝』収録)より: “Might ye, by hap, your freedom make bond, And fall in grace with her, and wele accord,”(「もしあなたがひょっとしたら運命に導かれて自由を束縛に変え、彼女の恩寵を得て幸福になるとしたなら」)

  • en.wikisource.orgエドマンド・スペンサー『アモレッティ』(1595年)より: “A gentle bee… about him flew by hap.”(「1匹の優雅な蜂が彼の周りに飛び回ってきた」)

  • poets.orgジョン・キーツ『エンディミオン』(1818年)より: “At last, by hap, through some young trees it struck…”(「ついに、偶然にも槍は若い木々の間を抜けて突き刺さった」)

  • gutenberg.orgフランシス・トンプソン『子供女人』(1885年頃)より: “He lifts by hap toward where the morning's roots are His weary stare” (「彼は偶然にも疲れた視線を夜明けのほうへ向けた」)

宗教・歴史文献

  • biblehub.comウィクリフ聖書(1382年版)サムエル記下1章より: “…And the young man said… ‘By hap I came into the hill of Gilboa…’” (「若者は言った…『たまたま私はギルボア山に来ていたのです…』」)

  • biblehub.comウィクリフ聖書列王記上22章より: “…and by hap he smote the king of Israel between the lung and the stomach.”(「そして、ある者が偶然にもイスラエル王の肺と胃との間を射抜いた。」)

  • biblegateway.comウィクリフ聖書(1サムエル6章)より: “…but this thing hath fallen to us by hap.”(「しかしこの出来事は偶然我々に起こったことなのだ。」)

  • english.nsms.ox.ac.ukラファエル・ホリンズヘッド『年代記』(1587年)より: “...But see the hap of things, whilest each one was thus occupied…”(「しかし皆がその金貨に夢中になっている間に、事の巡り合わせはいかに妙なるものかご覧よ。」)

  • sourcebooks.web.fordham.eduジャン・フロワサール『年代記』(14世紀)より: “…and by hap strake him through both the thighs, so that the knight fell to the earth…”(「偶然にも両腿を突き抜いて撃ち抜いたため、その騎士は倒れて起き上がれなかった。」)

戯曲

  • emed.folger.edu匿名戯曲『しつれい者改心』(1594年)より: 「“Ay marry ‘twas more by hap than any good cunning;”」(「ああ確かにな、これは技量というよりもむしろ偶然のおかげだよ。」)

随筆・哲学

  • thomasmorestudies.orgトマス・モア『ディサンプションの反駁』(1520年)より: “…nor where we found them by hap… we were further bound…”(「『あるいはたまたま出くわした貧しい人々に』だけでは十分でない、さらに私たちは・・・」)

  • thomasmorestudies.org同じくモアより: “…for the hope I may have that I have peradventure by hap fortuned upon that person that is one of the true.”(「…ひょっとして運命の巡り合わせでその人物が真の信徒の一人であればという希望を抱いて…」)

  • bopsecrets.orgミシェル・ド・モンテーニュ(フローリオ訳『随想録』1588年)より: “Conceits of musicke are directed by arte, mine by hap.”(「音楽の表現は技巧によって導かれるが、私の(詩歌の才)は偶然によるのだ」)

叙事・物語文学

  • gutenberg.orgトマス・マロリー『アーサー王の死』(1485年)より: “Then they rode three or four days… and by hap they were lodged with a gentleman…”(「彼らは数日間旅を続けていましたが、何の事件にも出会わず、幸いにも裕福な紳士のもとに宿泊することができました。」)

  • desiringgod.orgジョン・バニヤン『天路歴程』(1678年)より: “…but that, by good hap, we looked before us, and saw the danger before we came to it.”(「しかし幸運なことに私たちが事前に気づいたおかげで、危険を未然に見越すことができたのです。」)

上記はいずれも「by hap」を含む英語表現の例で、時代・ジャンルも多岐にわたる。原文と訳文により文学的な雰囲気やニュアンスが伝わるよう意訳した。なお【‥】内は引用元のページ番号と行番号である。

Pythonパッケージ管理におけるサプライチェーン攻撃の事例とリスク

 

自己伝播型マルウェア・ワーム型攻撃事例

Pythonのpip/PyPIでは、npmの「Shai-Hulud」のような完全自動で拡散するワーム型攻撃は大規模には報告されていません。しかし、攻撃者はPyPI上でマルウェアを巧妙に配置し、感染を広げようとしています。例えばPhylumが2023年5月に報告した事例では、攻撃者Patrick Pogodaが多数のGitHubリポジトリにマルウェア依存関係を配置し、同じマルウェアを含むPyPIパッケージ(例:「pycoloringsaddition」)を繰り返しアップロード・削除していました。PyPI側でパッケージが削除されると、数分以内にわずか名義を変えた新パッケージ(「syscolouringlibary」など)を公開し、自身のリポジトリを一斉に更新して参照先を切り替え、感染を持続させていましたblog.phylum.ioblog.phylum.io。このようにパッケージ名のわずかな変更と自動化でマルウェアを「復活」させる手口が確認されています。

  • 代表例:「pycoloringsaddition」→「syscolouringlibary」等(2023年5月、作者が自動的に新パッケージを公開し依存先を差し替え)blog.phylum.ioblog.phylum.io

  • 方法:setup.pyや初期化スクリプトに暗号化された悪性ペイロードを埋め込み、インストール時にユーザーのGitHubトークンや暗号ウォレット情報などを窃取。

  • その他のワーム型攻撃:npm環境のShai-Hulud攻撃が有名ですが、現時点でPyPIに同等規模の攻撃は観測されていません。ただしGitHub Actionsを悪用した大規模トークン窃取(GhostAction)はPyPI側にも波及しました(後述)。

トークン・クラウド認証情報を狙うPyPIパッケージ

PyPIには、インストールした環境から機密情報を窃取する悪意あるパッケージがいくつか見つかっています。著名な例としてはTyposquatting攻撃の一環で、人気パッケージを偽装した「fabrice」(fabricのスペルミス)があります。Socketの調査によれば、この「fabrice」は2021年3月に公開され、数万人にダウンロードされながらAWSアクセスキーとシークレットキーboto3経由で収集し、攻撃者サーバーへ送信していましたthehackernews.com。Linux版ではシェルスクリプト、Windows版ではVisualBasicスクリプト+Pythonスクリプトでペイロードを実行し、最終的にAWS認証情報を盗み出す仕組みです。Hacker Newsの報道では、「fabrice」がFabric(SSH実行ツール)の偽物であると解説されていますthehackernews.comthehackernews.com

GitHub上のCI/CD環境などから窃取された秘密情報の内訳例。2025年9月に明らかになった「GhostAction」攻撃では、プロジェクトのGitHub Actions環境からPyPIトークンやAWSキーを含む3,325件以上のシークレットが漏洩し、その中にはDockerHubやGitHubのトークン、Cloudflareキーなども含まれていましたbleepingcomputer.com

また、GitHub Actionsのワークフローを改竄してPyPIトークンを盗む「GhostAction」キャンペーン(2025年9月発覚)では、数百のリポジトリが改竄され、PyPIとnpmのトークンが攻撃者のサーバーに送信されましたbleepingcomputer.comblog.pypi.org。PyPI管理者は発覚後に影響トークンを全て失効させ、悪用された形跡は確認されませんでしたbleepingcomputer.comblog.pypi.org。なお、環境変数に機密情報を含む一般のプロジェクトからは、開発者のミスでGitHub PATが流出したケース(PyPI管理者アカウントのPATがコンテナ画像内に残存した事例)も報告されていますblog.pypi.orgblog.pypi.org

PyPI/pipのセキュリティ機構(署名、検出、報告体制)

PyPIとpipは近年、サプライチェーン攻撃に対抗するための対策を強化しています。まず、アカウント認証面では、2023年までにPyPI上のメンテナー全員に2要素認証(2FA)の義務付けが発表されましたblog.pypi.org。PyPIはパッケージ公開にパスワードの代わりにAPIトークン(認証トークン)を用いる方式を採用し、最も重要なプロジェクトは2FAで保護されていますblog.pypi.org。さらにGitHub ActionsからPyPIへ公開する場合は、「Trusted Publishers(短命かつ限定範囲のトークン)」の利用を推奨するなど、トークン盗難リスク軽減策を提供していますblog.pypi.org

ダウンロード時の検証機構としては、PEP 458/480で提案されたTUF(Update Framework)によるメタデータ署名も構想されていますが、現時点でPyPIでの導入は進行中です。署名ベースの配布(例:パッケージごとのGPG署名)は公式には廃止されました(削除の議論がPythonコミュニティで行われています)が、PSFは2FAとAPIトークンでアカウントの安全性を担保し、「信頼できるパブリッシャー」制度で公開権限を分離する方針ですpeps.python.orgblog.pypi.org

不正検出・報告体制では、PyPI運営はセキュリティ研究者からの報告を積極的に受け付けています。Webインターフェースに「プロジェクトをマルウェアとして報告」ボタンが追加され、発見者は問題箇所(ファイル・コード)を指定して報告できますblog.pypi.org。また、API経由の報告機能も試験中であり、報告されたパッケージはPSF管理者が数日以内に審査・削除していますblog.pypi.org。加えて、pipコマンドには依存関係スキャンツール(例:pip-auditsafety)を併用して既知の脆弱性を検査する運用が推奨されるなど、インストール前後の自動検査によるセキュリティ強化策も広まりつつあります。

DjangoなどWebアプリ関連パッケージのセキュリティ懸念

Webフレームワーク(Django, Flask など)やその周辺ライブラリは開発者が多く利用するため、攻撃者からの標的になりやすいです。たとえば、SC Mediaによれば、Jinja2/Djangoで使われる正規のテンプレートライブラリ「Coffin」を騙った悪意あるパッケージ(例:Coffin-Codes-Pro, Coffin-Codes-2022)が発見されており、これらはインストール時にGmailを経由して情報を盗み出し、WebSocketで不正操作を行う仕組みになっていましたscworld.com。また、脆弱性とは別ですが「Django-Mailer」の偽物「django-mail」や「django-mail」へのタイポスクワットを想定した攻撃可能性も指摘されており、開発者は依存パッケージの名称を慎重に確認する必要がありますbolster.ai

最近の攻撃例としては、Zscalerが2025年8月に報告した2つの悪意あるパッケージ sisaws および secmeasure(共にサードパーティ製の文字列操作系ライブラリと偽装)が挙げられます。これらはTyposquatting的な名前ではないものの、初期化時にPasteBinからPythonスクリプトをダウンロードし、Windows環境でSilentSyncというRAT(リモートアクセス型マルウェア)を展開しますzscaler.comscworld.com図示すると次のように、sisawssecmeasure はメンテナー情報やパッケージ名が酷似しており(下図参照)、両者から同一の不正スクリプトが実行されます。どちらも既にPyPIから削除されていますが、Djangoに限らず**「必ずしもメジャー名ではなくても、一般的な機能名や用語を使った偽装パッケージ」に注意**が必要ですzscaler.comscworld.com

Zscaler調査による悪性PyPIパッケージ sisaws(左)と secmeasure(右)のメタデータ比較例zscaler.comscworld.com。両者は異なる名前ながら同一人物が管理し、初期化時に同様の悪意あるコードを実行していました。

pip install・CI/CDパイプライン経由の感染リスクと対策

pip installは基本的に任意のパッケージのインストール時にsetupスクリプトを実行するため、攻撃者がsetup.pyやpyproject.toml内に悪意あるコードを書いていれば、任意コードが起動するリスクがあります。特にCI/CD環境での自動インストールでは、権限が高いとシステム全体が危険にさらされます。対策としては、以下が挙げられます:

  • 仮想環境(venv/container)の利用:プロジェクトごとにPython仮想環境やコンテナを使い、ホスト環境への影響を分離する。

  • 権限の最小化:CI/CDランナーやビルドサーバーではrootや高権限ユーザーで実行しない、ネットワークアクセスを制限するなど、侵害影響を局所化する。

  • 依存関係の固定化requirements.txtpoetry.lockpip-toolsなどでバージョンを固定し、浮動バージョンやワイルドカードを避ける。これにより、同名の悪意ある新バージョンが勝手に取り込まれるリスクを減らす。

  • ハッシュ検証pip install --require-hashesを使い、インストール時にパッケージのハッシュをチェックする。未知のパッケージや改竄版は拒否される。

  • 依存性スキャンと監査pip-auditやOSSセキュリティ製品で依存パッケージの脆弱性スキャンをCIに組み込む(サプライチェーン脅威検出)。

  • プライベートミラー・ミラーリング:社内PyPIミラーやインターネットフィルタで信頼されたパッケージソースのみを利用する。

  • CIの監査ログ:ビルドで実行されたpipコマンドやワークフローのログを監査・保管し、不審な動作の検知に備える。

加えて、PyPIへの依存公開には**「Trusted Publisher」(GitHubが提供する短命トークン)を使い、長期無効化しにくいトークンの使用を避けることが推奨されていますblog.pypi.org。さらに、ソフトウェアのサプライチェーン防御策として、攻撃者の侵入経路をモデル化し、依存ライブラリの第三者レビューや必要最低限の依存のみを選択するなどの脅威モデリング**も有効です。

まとめ

以上のように、Pythonエコシステムでも過去にTyposquatting型マルウェア(“fabrice”など)やワークフロー改竄によるトークン窃取(GhostAction)、巧妙化するパッケージレスキュー(復活)攻撃(Phylum報告)など多様な事例が報告されていますthehackernews.comblog.phylum.iobleepingcomputer.com。PyPI/pipのセキュリティ対策も強化されており、2FA義務化やAPIトークン化、報告ボタンの導入などが進められていますblog.pypi.orgblog.pypi.org。それでも、パッケージ管理では常に**「インストール前に公式性を確認し、インストール中に未知のネットワーク通信がないか注意し、定期的に環境を監査する」**といった基本対策が重要です。特にWebアプリケーションでは、広く使われるライブラリを介した攻撃(例:テンプレートエンジンや認証周りのライブラリ)にも警戒し、必要な最小限のパッケージに絞ることがリスク低減につながります。

参考資料: さまざまなセキュリティ研究者報告やメディア記事scworld.comthehackernews.comblog.pypi.orgblog.pypi.orgblog.pypi.orgを基にまとめました。各事例では発見時期・パッケージ名・手口・対処状況など具体的に報告されており、最新の脅威動向の把握に役立ちます。

浄瑠璃の譜面

 

1) パブリックドメイン(無料DL可・PDF=一次入手)

  • F. T. Piggott『The Music and Musical Instruments of Japan』(1893/1909 版)
    19世紀末の日本音楽概説で、西洋五線譜による例示採譜が多数(長唄・三味線系の断片を含む)。浄瑠璃(義太夫)そのものの全曲スコアではありませんが、様式理解と旋律例のPD資料として有用です(PDF直DL可)。 survivorlibrary.com+1

※浄瑠璃の完全五線譜スコアのPD公開は現状ほぼ見当たりません。早期の英文文献は断片採譜中心です。

2) 無料MIDI/無料譜面(要ライセンス確認)

  • mu-tech.org:伝統曲(長唄・端唄・地歌・義太夫など)
    各曲ページで楽譜PDF/画像・MIDI・試聴を無料配布。例:長唄「越後獅子」「鶴亀」ほか。サイト独自の制作物のためPDとは限りませんが、学習・アレンジの取っ掛かりに。 Mu-Tech

  • mu-tech.org(落語関係ページ)
    義太夫由来曲・関連曲(例:「近頃河原達立」「壷坂霊験記 住吉籠」など)の楽譜・MIDIの配布あり。こちらも権利は各ページの表記に従う前提です。 Mu-Tech

参考:ネット上には「幻想浄瑠璃」と題するオリジナル曲のMIDIも流通していますが、伝統浄瑠璃の採譜ではありません(名称が紛らわしいため要注意)。 MidiShow+2GetUploader+2

3) 研究用の“完全スコア”(五線譜)を確実に入手=購入(Amazon)

  • William P. Malm『Nagauta: The Heart of Kabuki Music』(Tuttle)
    付録に**長唄の完全スコア(西洋五線譜)**が2作収録。浄瑠璃と同系統の三味線歌物で、実用的な参照譜として定番です(Kindle/ハードコピー)。 Amazon+1
    補足:Internet Archiveに書誌と付録記述の情報ページもあります(貸出/プレビュー扱いで、PDではありません)。 Internet Archive

4) 学術論文(断片採譜の例)

  • Gidayu/Kiyomoto 等の語り物に関する分析論文
    様式説明とともに短い採譜例が掲載されることがあります(例:Narrative musicのフォーミュラ分析)。フル譜ではありませんが、節型の把握に有用。 ResearchGate

『アメリカン・サイコ』に対する好意的・技巧面の評価

 

海外の評者による論評

  • ヘンリー・ビーン(小説家・脚本家) — エリスの描く1980年代消費社会の退廃を、グロテスクも官能も同じ無表情なトーンで描く**「純粋な交換価値のような文体」による風刺として評価。筋らしい筋や明確なキャラクターが不在にもかかわらず、語りの妙によって「読むのを止めることがほとんど不可能」**にしてしまう点を称賛しているlatimes.com出典: ロサンゼルス・タイムズ紙 書評「SLAYGROUND: AMERICAN PSYCHO」(1991年3月17日)より. 引用: “The miracle of Bret Easton Ellis is that ... with a throwaway nonstyle ... a prose that is pure exchange value, he nevertheless makes it virtually impossible to stop reading.”latimes.com

  • フェイ・ウェルドン(小説家・文芸評論家) — エリスを「非常に優れた作家」と評し、本作を**「精巧に統制された、注意深く作られた重要な小説」**だと絶賛theguardian.com。過激な暴力描写に対する批判に対しては「それを大げさに糾弾する我々の側に問題がある」と反論し、誰も罰されず救済もないこの物語が現代社会の冷淡な現実を暴いたものだと評価しているtheguardian.comtheguardian.com出典: ガーディアン紙 書評「An honest American psycho」(1991年4月25日、著者フェイ・ウェルドン)より. 引用: “American Psycho is a beautifully controlled, careful, important novel which revolves about its own nasty bits. Brilliant.theguardian.com

  • アーヴィン・ウェルシュ(小説家) — 本作を「我々の時代で最も偉大な小説の一つ」と位置づけ、当初物議を醸した過激描写もブラックユーモアと風刺によって現代社会の醜悪さを映し出すために不可欠だったと高く評価しているtheguardian.comtheguardian.com。とりわけ一人称・現在形で語られる文体について、「読者を主人公の視点に引き込み、その暴力と消費社会の客体化の過程に読者を加担させる」巧みな叙述技法だと称賛したtheguardian.com出典: ガーディアン紙 寄稿記事「American Psycho is a modern classic」(2015年1月10日、著者アーヴィン・ウェルシュ)より. 引用: “the narrative style of American Psycho forces the reader to adopt his point of view... the reader is implicated in both the violence and the objectifying processes of consumer society.”theguardian.com

日本人評者による論評

  • 村上春樹(小説家) — 「作品としての評価は完全に分かれているけれど、社会的状況の資料としてこれほど自己犠牲的にシニカルで本質的な小説はちょっとない」と述べ、本作の徹底した風刺性を高く評価しているja.wikipedia.org。同時代の話題作『虚栄のかがり火』(トム・ウルフ)と比べても、本作の方がはるかに覚悟を持って社会の本質を暴いていると指摘したja.wikipedia.org出典: 村上春樹『やがて哀しき外国語』(エッセイ集、講談社、1994年)所収の評論より. 引用: 「作品としての評価は完全にわかれているけれど、社会的状況資料としてこれくらい自己犠牲的にシニカルで本質的な小説はちょっとない」ja.wikipedia.org