あらすじ
清末の中国、寒村「未荘」で日雇い暮らしの阿Qは、誇りだけは高いのに現実ではしょっちゅう負けます。殴られても侮辱されても、心の中で「自分が勝ったことにする」理屈を作り、屈辱を帳消しにして生き延びます。やがて革命の噂が広がると、阿Qは時代の流れを理解しないまま「自分も英雄側に入れる」と勘違いして便乗しますが、結局は権力や世間の都合に振り回され、取り返しのつかない結末へ進みます。
みどころ
1) 「精神的勝利法」の怖さと滑稽さ
負けを負けとして受け止めず、心の中で勝利宣言してしまう。これは笑えるのに、同時に現実を変える行動を止めてしまう怖さがあります。
2) 民衆の弱さだけでなく、社会の仕組みの残酷さ
阿Qを「だめな個人」として切り捨てる話ではありません。周囲の村人、権力、噂、空気が、阿Qを都合よく利用し、排除する。個人の弱さと、社会の冷酷さがセットで描かれます。
3) 革命が「正しさ」では回らない現実
革命が起きても、立場の強い側が看板を塗り替えて得をするだけで、弱い側が救われないことがある。その皮肉が作品の芯です。
現状に即して、いま読む意味
1) 失敗の「言い換え」で心を守りすぎる問題
SNSや職場でも、負けや失敗を直視せず、都合のいい物語で自分を守ることがあります。短期的には楽でも、現実の改善から遠ざかる。その構図が阿Qに凝縮されています。
2) 「流行りの正義」に便乗する危うさ
時代の言葉を借りれば自分が強くなった気がする。でも中身の理解がないと、最後に切り捨てられる。炎上、ブーム、分断の空気にも通じます。
3) 弱者いじりとスケープゴート
社会が不安定になるほど、誰かを笑いものにして安心する心理が強まります。阿Qはその受け皿にされる側の典型で、見て見ぬふりをしがちな残酷さを突きつけます。