2026年6月28日日曜日

ソフトウェア開発におけるポストモーテム

 概要:

本稿では、ソフトウェア開発におけるポストモーテムを単なる障害報告書や再発防止文書としてではなく、「味わう仕様書」の一形態として再解釈することを提案する。従来のポストモーテムは、障害の原因究明と対策立案を目的としてきたが、その過程には技術的制約、組織的意思決定、暗黙知、そして当時の技術文化が豊富に記録されている。本研究では、Atlassian型のポストモーテム形式に着目し、「何が起きたか」「何がうまくいったか」「何を学んだか」という記述を、失敗から知識を抽出するための物語的構造として位置づける。これにより、EJBからSpringへの移行、クラウド障害、オープンソースプロジェクトの設計変更などを、単なる歴史資料ではなく、制約と選択の痕跡を味わうための知識資産として扱えるようになる。ポストモーテムを味わうことは、過去の失敗を追体験し、当時の技術者が直面した問題空間を理解し、将来の設計判断に活用するための「失敗学的読書」と位置付けられる。本稿は、ポストモーテムを技術史・組織学習・知識継承のための新しいアーカイブとして捉える視点を提示する。

関連キーワード:
ポストモーテム、味わう仕様書、失敗学、インシデント管理、技術史、暗黙知、組織学習、ソフトウェアアーキテクチャ、制約指向設計、ナレッジマネジメント、ブレームレス文化、技術的負債、アーカイブ学、ソフトウェア工学、ケーススタディ