本稿は、モールス信号以後の通信史におけるBaudot方式を、単なる文字符号ではなく、時間・身体・機械同期を統合する通信プロトコルとして捉え直す。モールスが短点・長点・間隔を人間の聴覚的リズムとして運用したのに対し、Baudotは五単位のオン/オフ信号を、同期分配器による時間スロットへ配置した。ここでは通信線は単なる導線ではなく、複数の操作者と印字機構が共有する拍の場となる。五鍵入力、信号保持、回転分配、受信側印字という一連の操作は、後のシリアル通信、時分割多重、バッファリング、端末プロトコルの原型を含んでいる。したがってBaudotは、モールスの「叩く通信」からITA2以後の「流す通信」へ移行する中間形態であり、人間の拍が機械のクロックへ翻訳される瞬間を示す技術文化的装置である。本研究は、この移行を「味わう」ことで、通信プロトコルを効率の体系ではなく、リズム、待機、同期、印字の感覚的編成として読解する。