絶対無の発展史は、仏教思想から近代日本哲学へと段階的に形成されました。起源は大乗仏教、とくに龍樹の中観思想にあり、「空」は固定的実体を否定し、関係性として世界を捉える立場でした。禅ではこの空が実践化され、言語や論理を超えた覚知として重視されます。近代に入ると、西田幾多郎がこの仏教的空を哲学的に再構成し、主体と客体を成立させる根底として「絶対無」を定式化しました。さらに鈴木大拙は、絶対無を禅体験の核心として位置づけ、日本的霊性の基盤として文化論的に展開しました。