「ゾッキ本」的な流通形態・思想のサービス
(国内) 「ゾッキ本」とは再販制度から外れて定価より大幅に安く売られる新品の本のことですja.wikipedia.org。いわゆる“バーゲンブック”や“新古本”とも呼ばれ、出版社の在庫過多や倒産時に出回った本など、一度も読者に渡っていない新品が古書扱いで安売りされるものですja.wikipedia.org。このような特価本の流通を専門に扱う**「ぞっき屋」と呼ばれる卸業者も存在しますja.wikipedia.org。日本では、大手中古書店チェーンのブックオフが代表的で、新刊定価販売から外れた自由価格本を店舗で販売しています。ブックオフでは基本的に中古品が中心ですが、ゾッキ本(特価本・アウトレット本)も販売されていることが知られていますdetail.chiebukuro.yahoo.co.jp。実際、ブックオフ各店には出版社から仕入れた新品バーゲンブックコーナーがあり、定価の半額以下で並ぶ書籍も多いです。その他、オンラインではブックオフオンラインやネットオフ**(ゲオ運営)などが中古と併せてバーゲン本を販売しています。出版社から特価本を仕入れて全国の書店に卸す問屋としては、神田神保町の老舗魚住書店(1888年創業)などが挙げられます。魚住書店は約1500店の小売店と取引し、出版社在庫の買取・特価本の卸売を手掛けていますuozumishoten.jpuozumishoten.jp(※小売店向けサービスのため個人直接利用は不可)。一般読者が直接新品のバーゲンブックを買うには、楽天ブックスやヨドバシ.comのバーゲン本コーナーが便利です。ヨドバシカメラなどの通販サイトでは「バーゲンブック特集」として多数の特価本を30~80%OFFで販売しており、説明文でも「未使用の新本だが格安で再販売した本」であることが明記されていますyodobashi.com。実店舗でも、ショッピングセンターの催事等でバーゲンブックフェアが開催されることがあります
。写真はある書店でのバーゲンブック売場の様子ですが、新本を「本のバーゲンセール30~60%OFF」で販売しており、裏表紙にバーゲンブックを示す印やシールが貼られています(再販本と区別するため)yodobashi.com。このようなバーゲン本流通は「定価販売が前提」の日本の出版流通では例外的な存在ですが、読者にとって掘り出し物を安価に入手できる機会となっています。
また、「未完成流通」に近い思想として、完成前の作品を仮に流通させるケースも考えられます。日本の同人文化では、イベントに制作途中のコピー本を出す例があります。例えばコミックマーケットなどで、間に合わなかった原稿をコピー製本した「コピー本」や、本文途中までのプレビュー版を配布し、後日完成版を頒布することがあります(いわゆる仮製本・予告本の頒布)。これもある意味「未完成のまま流通させる」形態です。正式なサービスではありませんが、創作活動における一手法として定着しています。
一方、商業流通に乗らないZINEやリトルプレスを取り扱うサービスも増えています。個人制作のZINEを全国の書店に流通させるウェブサービス**「一冊!リトルプレス」はその一例ですnote.com。これは「一冊!取引所」という受発注プラットフォームを利用し、ZINE作り手と書店を結ぶ仕組みになっていますnote.com。利用には年会費5,500円+作品登録料1アイテムあたり1,100円が必要ですが、登録するだけで全国の提携書店から注文が入り、簡単な手続きで委託配本が行えますnote.com。注文が来れば通知が届き、あとは指定書店に向けてZINEを発送するだけで、売上精算も自動で行われますnote.com。実際にこのサービスを利用して、自作ZINEを各地の独立系書店に置いてもらっている作り手もいますnote.comnote.com。従来、個人で書店に営業し委託交渉するハードルは高かったですが、プラットフォームを介すことで販路拡大が容易になっています。ほかにも、三輪舎が立ち上げた「本の流通協同組合」(本協)という、小さな出版社や個人レーベルと書店を繋ぐ共同流通の取り組みもありますdistributor.3rinsha.co.jp。ZINE専門の実店舗としては、中野ブロードウェイのタコシェや下北沢のB&B**、各地のZINEショップが挙げられ、これらも個人ZINEの委託販売を受け付けています。さらに、オンラインマーケットプレイスのEtsyやBOOTH(pixiv)はグローバルに個人がZINEや同人誌を販売する場を提供しており、流通形態として「直接販売・直送」という形で広く利用されています。まとめると、ゾッキ本のような割引販売ルート(バーゲンブック)や、未完成品・自主制作物を通常流通に乗せる代替ルート(同人即売会やオンライン委託)が国内には複数存在し、個人でも活用できるサービスが整ってきています。
(海外) 海外でも新品の安価本やアウトレット本を扱うサービスが数多くあります。代表的なのは北米のBook Outletで、ここは出版社の余剰在庫や店頭返品本を大量に仕入れ、定価の50%以上割引で新品同様の本を販売するオンラインストアですbookoutlet.com。在庫点数も非常に豊富で、ジャンル問わず掘り出し物が見つかります。販売される本は基本的に未使用の新本ですが、まれにカバーに印や小さな傷がある場合があり、サイト上でその旨も説明されています(読書に支障が出るようなダメージ本は扱わない方針)facebook.com。アメリカでは他にHalf Price Books(実店舗チェーン、主に中古だが新古品もあり)や、図書館払下げや寄付本を扱うBetter World Books、大手ではAmazonの**“Bargain Books”コーナーなどが新品アウトレットの入手先です。イギリスにもThe WorksやBook Depotといったディスカウント書店があり、新品の過剰在庫本を廉価販売しています。こうしたサービスはいずれも一般読者向けに新品を書籍定価の半額以下で提供**しており、出版社・取次から直接仕入れたリマインダー本(返品残)を流通させる点で「ゾッキ本」的です。
未完成原稿や制作途中の作品を読者に届けるサービスも、デジタル領域を中心に存在します。例えばLeanpubは電子書籍のセルフ出版プラットフォームですが、執筆途中の未完成本を販売・更新していけるユニークなモデルを採用していますhelp.leanpub.com。購入者は未完成の本を購入後、著者が新たな章や改訂をアップデートするたび無料で最新版を入手できますhelp.leanpub.com。これにより読者は著者と一緒に本が育つ過程を体験でき、フィードバックを送ることも可能です。Leanpubで販売されている技術書などには「現在xx%完了」と進捗表示されているものも多く、まさに「未完成のまま流通させる」思想と言えます。また、技術書出版社のManningはMEAPと称して未完成原稿を先行発売し、完成まで段階的に内容を追加配信します。O’Reilly社もかつて“Early Release”シリーズで執筆中の原稿を提供していました。これらは紙の書籍ではありませんが、「完成前でも読者に届ける」サービスの海外事例です。
さらに、インディーズのZineやアートブックを扱う海外流通にも様々な形態があります。米国のMicrocosm Publishingはポートランド拠点のインディー出版社兼ディストリビューターで、世界中のZineやコミック、小規模プレスの本を卸・小売販売しています。Small Press Distribution(SPD)は長年アメリカで小出版社の流通を支えてきました(※2025年に一時運営停止との報道ありlithub.com)。SPDに代わる新たな流通として、AsterismやItascaなどが小プレスの受け皿となっていますpublishersweekly.com。欧米ではzineフェスティバルやコミックコンベンションなどイベントで直接頒布する文化も盛んで、イベント主催者がオンラインカタログ・通販を併設する例もあります(例:シカゴZine Festの通信販売部門など)。また、日本のBOOTHに相当するようなStorenvyやBig Cartelといった個人ショップ開設サービスを利用し、海外クリエイターが自作Zineを直販して国際発送するケースも一般的です。これらは中央集権的な取次ではありませんが、「商業流通に乗せなくても作品を届ける」点でゾッキ本的な思想に通じます。総じて海外では、特価で新品書籍を提供するアウトレット書店と、未完成作品やZineをファンに届ける独自流通(電子プラットフォームやイベント直販)が二極化して発達しており、日本同様に個人でもアクセスしやすいサービスが充実しています。