2026年7月12日日曜日

Unitree公式から「G1の16GB RAMを、認識に何GB、LLMに何GB、制御に何GB」という標準配分表は公開されていません。

 公開されているのは主に、

  • ハードウェア仕様
  • DDSやSDKのインターフェース
  • 用途別の公式リポジトリ
  • 学習・実機展開の手順

までです。アプリ構成やメモリ配分は開発者側に委ねられています。G1の公式開発資料も、運動制御用コンピュータとJetson開発用コンピュータを分け、Jetson側の仕様を示していますが、CPU・GPU・RAMの利用割合までは規定していません。

Unitree公式が公開している「標準に近いもの」

ファイル/リポジトリの分け方が、実質的な標準構成になっています。

G1内部
├─ Unitree純正モーション制御
│  └─ 立位・歩行・関節安定化
│
└─ Jetson上のユーザーアプリ
   ├─ unitree_sdk2 / ROS 2
   │  └─ DDS通信
   ├─ xr_teleoperate
   │  └─ 遠隔操作・データ収集
   ├─ unitree_lerobot
   │  └─ 模倣学習・推論
   ├─ unitree_rl_lab
   │  └─ RLポリシーの学習・実機展開
   └─ 独自の認識・計画プログラム

Unitree自身も、RL、XR遠隔操作、模倣学習を別プロジェクトとして公開しています。つまり、ひとつの巨大な「G1自律AI」ではなく、必要な機能をモジュールとして組み合わせる設計です。

論文でよく見られる標準構成

G1を使った最近の研究では、次のような階層構造がかなり一般的です。

高レベル
VLM・LLM・タスクプランナー
10~数Hz
        ↓
中レベル
動作生成・経路計画・操作ポリシー
10~50Hz
        ↓
低レベル
RL全身ポリシーまたはWBC
50~100Hz程度
        ↓
関節制御
PD・トルク制御
数百Hz以上

ここで重要なのは、高レベルAIと姿勢制御を分けることです。

LLMやVLMは、

  • 何を取るか
  • どこへ行くか
  • 次に何をするか

を決めます。

全身制御ポリシーは、

  • 足をどこへ出すか
  • 腰や腕をどう動かすか
  • バランスをどう保つか

を決めます。

最新のG1研究でも、VLMによる上位計画と、リアルタイム全身コントローラを別層にする構成が採用されています。HANDOFFはVLM駆動の上位エージェントと、歩行・操作・転倒復帰を統合した低位コントローラを分離しています。

DemoHLMも、高レベルの操作ポリシーと、低レベルの汎用全身コントローラを階層化しています。

ダンスや全身模倣の場合

ダンスでは、次の構成が典型的です。

参照モーション
        ↓
モーション追跡ポリシー
        ↓
関節目標
        ↓
PD制御

ExBody 2は、人間の参照モーションを入力し、RLで学習した単一の全身追跡ポリシーがG1を安定させながら動きを再現します。

つまり、モーションファイルをそのままモーターへ送るのではなく、

録画モーション
+
学習済み安定化コントローラ

として実行します。

自律作業の場合

物を運ぶ、ドアを開ける、棚へ置くといった作業では、

カメラ・深度
    ↓
認識モデル
    ↓
タスク計画
    ↓
手先・歩行目標
    ↓
全身制御ポリシー
    ↓
関節制御

という構成になります。

2026年のULTRAは、視覚などの入力から高レベル目標を受け、モーション追跡だけではなく、目標条件付きの全身動作をG1上で生成する構成を示しています。

一方、ULCは上半身と下半身を別々に制御せず、ひとつの統合ポリシーで歩行と両腕操作を扱う方式を提案しています。つまり、階層分割が一般的ではあるものの、どこまで統合するかは現在も研究対象です。

RAMの現実的な按配

これはUnitree公式値ではありませんが、Jetson Orin NX 16GBで組む場合の現実的な一例です。

OS・CUDA・基本サービス       2~4GB
ROS 2・DDS・センサー処理     1~2GB
カメラ・深度・SLAM           2~5GB
物体認識モデル               1~3GB
全身RLポリシー               数十~数百MB
小型LLM・VLM                 残りの数GB
安全余裕                     2GB前後

全身RLポリシー自体は、LLMほど巨大ではありません。姿勢制御用ネットワークは比較的小さく、むしろカメラ画像、SLAM、VLM、LLMのほうがRAMとGPUを大きく消費します。

そのため実際の設計では、

姿勢制御を最優先
↓
センサー処理と認識
↓
余裕があればローカルLLM

という順になります。

大型LLMを無理に機体内へ置くより、

G1機体内
├─ 姿勢制御
├─ 認識
├─緊急停止
└─ 短期計画

外部PC・サーバー
└─ 大型VLM・LLM・長期記憶

と分けるほうが実用的です。

まとめ

Unitreeが公式に示しているのは、固定された資源配分ではなく、機能別の部品とインターフェースです。

公式に公開
├─ Jetsonの仕様
├─ DDS通信
├─ 高/低レベルSDK
├─ RL学習・展開環境
├─ XR遠隔操作
└─ 模倣学習環境

公式には非公開
├─ 推奨RAM配分
├─ 推奨GPU配分
├─ 標準的な自律判断アーキテクチャ
└─ 純正モーション制御内部

論文上の現在の標準に最も近いのは、

LLM/VLMは低頻度の意味判断、認識モデルは知覚、RLまたはWBCは高速な全身制御、PDは最終関節制御

という階層型です。

ただし、上半身・下半身を分けるか、ひとつの統合ポリシーにするか、モーション生成と追跡を分けるかは、まだ決着していません。G1はちょうど、その「標準按配」を研究している最中のプラットフォームと言えます。