公開されているのは主に、
- ハードウェア仕様
- DDSやSDKのインターフェース
- 用途別の公式リポジトリ
- 学習・実機展開の手順
までです。アプリ構成やメモリ配分は開発者側に委ねられています。G1の公式開発資料も、運動制御用コンピュータとJetson開発用コンピュータを分け、Jetson側の仕様を示していますが、CPU・GPU・RAMの利用割合までは規定していません。
Unitree公式が公開している「標準に近いもの」
ファイル/リポジトリの分け方が、実質的な標準構成になっています。
G1内部 ├─ Unitree純正モーション制御 │ └─ 立位・歩行・関節安定化 │ └─ Jetson上のユーザーアプリ ├─ unitree_sdk2 / ROS 2 │ └─ DDS通信 ├─ xr_teleoperate │ └─ 遠隔操作・データ収集 ├─ unitree_lerobot │ └─ 模倣学習・推論 ├─ unitree_rl_lab │ └─ RLポリシーの学習・実機展開 └─ 独自の認識・計画プログラム
Unitree自身も、RL、XR遠隔操作、模倣学習を別プロジェクトとして公開しています。つまり、ひとつの巨大な「G1自律AI」ではなく、必要な機能をモジュールとして組み合わせる設計です。
論文でよく見られる標準構成
G1を使った最近の研究では、次のような階層構造がかなり一般的です。
高レベル VLM・LLM・タスクプランナー 10~数Hz ↓ 中レベル 動作生成・経路計画・操作ポリシー 10~50Hz ↓ 低レベル RL全身ポリシーまたはWBC 50~100Hz程度 ↓ 関節制御 PD・トルク制御 数百Hz以上
ここで重要なのは、高レベルAIと姿勢制御を分けることです。
LLMやVLMは、
- 何を取るか
- どこへ行くか
- 次に何をするか
を決めます。
全身制御ポリシーは、
- 足をどこへ出すか
- 腰や腕をどう動かすか
- バランスをどう保つか
を決めます。
最新のG1研究でも、VLMによる上位計画と、リアルタイム全身コントローラを別層にする構成が採用されています。HANDOFFはVLM駆動の上位エージェントと、歩行・操作・転倒復帰を統合した低位コントローラを分離しています。
DemoHLMも、高レベルの操作ポリシーと、低レベルの汎用全身コントローラを階層化しています。
ダンスや全身模倣の場合
ダンスでは、次の構成が典型的です。
参照モーション ↓ モーション追跡ポリシー ↓ 関節目標 ↓ PD制御
ExBody 2は、人間の参照モーションを入力し、RLで学習した単一の全身追跡ポリシーがG1を安定させながら動きを再現します。
つまり、モーションファイルをそのままモーターへ送るのではなく、
録画モーション + 学習済み安定化コントローラ
として実行します。
自律作業の場合
物を運ぶ、ドアを開ける、棚へ置くといった作業では、
カメラ・深度 ↓ 認識モデル ↓ タスク計画 ↓ 手先・歩行目標 ↓ 全身制御ポリシー ↓ 関節制御
という構成になります。
2026年のULTRAは、視覚などの入力から高レベル目標を受け、モーション追跡だけではなく、目標条件付きの全身動作をG1上で生成する構成を示しています。
一方、ULCは上半身と下半身を別々に制御せず、ひとつの統合ポリシーで歩行と両腕操作を扱う方式を提案しています。つまり、階層分割が一般的ではあるものの、どこまで統合するかは現在も研究対象です。
RAMの現実的な按配
これはUnitree公式値ではありませんが、Jetson Orin NX 16GBで組む場合の現実的な一例です。
OS・CUDA・基本サービス 2~4GB ROS 2・DDS・センサー処理 1~2GB カメラ・深度・SLAM 2~5GB 物体認識モデル 1~3GB 全身RLポリシー 数十~数百MB 小型LLM・VLM 残りの数GB 安全余裕 2GB前後
全身RLポリシー自体は、LLMほど巨大ではありません。姿勢制御用ネットワークは比較的小さく、むしろカメラ画像、SLAM、VLM、LLMのほうがRAMとGPUを大きく消費します。
そのため実際の設計では、
姿勢制御を最優先 ↓ センサー処理と認識 ↓ 余裕があればローカルLLM
という順になります。
大型LLMを無理に機体内へ置くより、
G1機体内 ├─ 姿勢制御 ├─ 認識 ├─緊急停止 └─ 短期計画 外部PC・サーバー └─ 大型VLM・LLM・長期記憶
と分けるほうが実用的です。
まとめ
Unitreeが公式に示しているのは、固定された資源配分ではなく、機能別の部品とインターフェースです。
公式に公開 ├─ Jetsonの仕様 ├─ DDS通信 ├─ 高/低レベルSDK ├─ RL学習・展開環境 ├─ XR遠隔操作 └─ 模倣学習環境 公式には非公開 ├─ 推奨RAM配分 ├─ 推奨GPU配分 ├─ 標準的な自律判断アーキテクチャ └─ 純正モーション制御内部
論文上の現在の標準に最も近いのは、
LLM/VLMは低頻度の意味判断、認識モデルは知覚、RLまたはWBCは高速な全身制御、PDは最終関節制御
という階層型です。
ただし、上半身・下半身を分けるか、ひとつの統合ポリシーにするか、モーション生成と追跡を分けるかは、まだ決着していません。G1はちょうど、その「標準按配」を研究している最中のプラットフォームと言えます。