2026年7月11日土曜日

聖書文書が物として翻訳・朗読・収集・破壊・発注・携帯・献上・量産されたことが確認できる事例だ

 

年代現物・言及史料物として確認できる用途史料上の意味
紀元前2世紀『アリステアスの手紙』律法の原本をエルサレムから取り寄せ、ギリシャ語に翻訳し、王立図書館へ収蔵する物語自体は史実そのままとは考えられていないが、律法が移送・翻訳・校訂・朗読・図書館収蔵される書物として描かれる最古級の資料。(attalus.org)
紀元前2世紀末『ベン・シラの知恵』ギリシャ語訳序文「律法・預言者・その他の書物」を読書・学習し、別言語へ翻訳する複数の権威的書物が、分類された読書・教育・翻訳対象として認識されていたことを示す。(BibleGateway)
紀元前1世紀~紀元70年以前テオドトス碑文会堂を「律法の朗読」と「戒めの教授」のために建設する石碑によって、律法文書が会堂における公共朗読・教育用媒体だったことが確認できる。(image-database.nes.lsa.umich.edu)
紀元93~94年頃ヨセフス『アピオン反駁』権威を認める22冊を限定し、追加・削除・変更を禁じる聖書文書群を、無制限な蔵書ではなく限定された標準書目・改変禁止の本文として説明した初期の明瞭な記録。(Penelope)
2~3世紀初期キリスト教のコデックス断片福音書や使徒書簡を巻物ではなく、ページを綴じた冊子で携帯・参照する初期キリスト教徒は比較的早くコデックスを多用した。前後を素早く参照でき、複数文書を一体化しやすい形式だった。初期コデックスの成立自体は1世紀まで遡る。(British Library)
303年ディオクレティアヌス帝迫害についてのエウセビオスの記録教会の聖書文書を押収し、公の場所で焼却する聖書が思想だけでなく、破壊すべき共同体の物的インフラと認識されていた。エウセビオスは教会破壊と「聖なる書物」の焼却を目撃記録として述べる。(New Advent)
4世紀前半コデックス・ヴァティカヌス、コデックス・シナイティクス多数の聖書文書を大型羊皮紙冊子に集約する聖書が、個別の巻物群から旧約・新約を大規模に統合した冊子型ライブラリへ近づいたことを示す。シナイ写本は複数の書記と訂正者の作業痕を残す。(British Library Archives)
331~332年頃コンスタンティヌス帝の「50部の聖書」発注新設教会のため、羊皮紙に読みやすく書かれた聖書50部を専門写字生へ発注するエウセビオスが皇帝の注文書を引用している。聖書が国家資金で仕様を指定され、専門工房で複数生産される教会設備になった。(Christian Classics Ethereal Library)
4世紀末~5世紀初頭ヒエロニムスによるラテン語聖書の改訂・翻訳異なるラテン語本文を校訂し、ヘブライ語・ギリシャ語資料と照合する後に「ウルガタ」と呼ばれる本文系統の基盤となり、西欧で複製される聖書の標準ソース本文を形成した。ただし、中世を通じて本文には地域差が残った。(Cambridge University Press & Assessment)
7世紀末~8世紀初頭コデックス・アミアティヌス完全なラテン語聖書を一巻の巨大な冊子にまとめ、教皇への贈答品として運搬する716年、修道院長チェオルフリスがローマへの献上品として携行した。聖書が外交的・宗教的贈答品、修道院技術の記念碑として使われた。(The Library of Congress)
830~840年代ムーティエ=グランヴァル聖書修道院写字室で巨大な完本聖書を制作し、共同体に所蔵するトゥールの修道院写字室で制作された大型完本で、聖書が修道院改革・典礼・権威表示のための据え置き型書物になった例。(British Library)
9世紀前後カロリング朝の大型聖書群統一されたラテン語本文を各地の教会・修道院へ供給する聖書の複製が個別注文だけでなく、帝国と修道院改革に結びついた本文統一・制度整備事業になった。巨大で高価なため、主に共同体所有だった。(Cambridge University Press & Assessment)
11~12世紀注解付き聖書・Glossed Bible本文の周囲へ教父の注解を書き込み、学校や修道院で比較して読む聖書本文だけでなく、余白の注釈を一体化した教育用ワークステーションとなる。本文と公認解釈を同じページ上で運用した。(Cambridge University Press & Assessment)
12~13世紀大学都市の聖書生産講義、説教、神学研究に使うため、章立て・配列・検索補助を標準化するパリなどで聖書制作が修道院中心から都市の専門写字生・書籍商へ移り、大学教育の需要に対応した。
13世紀パリ聖書全聖書を小型の一冊に収め、学生・説教師が携帯する薄い羊皮紙と極小文字を使い、書物の順序、章区分、序文などを一定化した。聖書が巨大な教会備品から携帯可能な標準リファレンスへ変わった。グーテンベルク聖書の本文構成も、この13世紀パリ系ウルガタを基盤とする。(Wikipedia)
13世紀聖書道徳化本(Bible moralisée)聖書場面と、その道徳的・神学的解釈を大量の画像で対にして示す王侯貴族向けの豪華本で、本文を通読するというより、画像と短文で解釈を教える視覚的教育・権威表示用聖書だった。現存本はデジタル公開されている。(Digital Bodleian)
13~14世紀ペキア方式による大学写本校正済みの親本を分冊し、複数の写字生へ貸し出して並行複製する一冊を一人が最初から最後まで写すのではなく、分業して複製時間を短縮する。聖書や神学書が管理された複製システムに組み込まれた。
14~15世紀鎖付き聖書・鎖付き写本教会・図書館で閲覧を許しつつ、持ち去りを防ぐ装丁に鎖を取り付けた痕跡が現存する。聖書は公開される一方、高価な共有財産として物理的アクセス制御を受けた。(Bodleian Library Medieval Manuscripts)
1454~1455年頃グーテンベルク聖書金属活字と印刷機により、大型ラテン語聖書を百数十部規模で複製する西欧初の印刷物ではないが、金属活字で作られた最初の大規模書籍。約180部が製作され、約145部が紙、約35部が羊皮紙だったとされる。(The Library of Congress)