ABAP CDSは、関係データベース上の表や列を、単なる保存構造ではなく、業務上の意味を備えたデータモデルとして記述するための仕組みである。従来のSQLが主として取得対象、結合条件、集約方法を表現するのに対し、CDSはAssociation、Composition、型、権限、通貨・単位、UI、分析、API公開などのメタデータを同一モデルへ重ねる。これにより、受注、顧客、明細といった企業内の概念を、画面や個別プログラムごとに再定義せず、中央の意味モデルとして共有できる。この思想は、Javaオブジェクトを中心とするEJBやSpringのORMよりも、AEMの基盤となったJCR、Apache Jackrabbit、Apache Slingの構造に近い。JCRがコンテンツを型、属性、参照、階層を持つノードとして保存し、SlingがHTTPリソースとして公開するように、ABAP CDSは業務データを意味付きエンティティへ変換し、Service DefinitionとODataを通じて外部へ公開する。ただし、AEMが記事や画像などのコンテンツ管理を主目的とするのに対し、CDSは会計、在庫、販売など、整合性と権限制御を伴うトランザクションデータを扱う。したがってABAP CDSは、SQLビューの拡張ではなく、企業の帳簿をセマンティックな情報資源へ変換するモデル記述言語として理解できる。
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