型をそろえた書き換え(数式バージョン)
1. まず型を決める
言語学的な対象と数学的な対象をきちんと分けて定義します。
- 記号の集合: Σ = { 言語的な能記 }
- 意味の集合: M = { 意味内容や命題 }
- 能記から意味への写像(意味作用): f : Σ → M
ある能記 S ∈ Σ に対して、 その意味 s を s = f(S) と書きます。 これで「S に対応する意味 s」が型付きで表現できます。
2. S が意味に作用する構造として書く
ラカンがやりたかったのは「能記 S が意味 s に作用して別の意味を生む」という構造だと解釈できます。
- 意味空間上の作用: TS : M → M
- ある意味 s ∈ M に対して、 s' = TS(s)
例えば「意味が変形されない状況」は TS(s) = s、 「意味が反転するモデル」を入れたいなら あらかじめ M をベクトル空間に埋め込み、 反転を TS(s) = -s のように定義します。
3. どうしても √−1(虚数 i)を使いたい場合
「ある意味が虚数 i に対応する」と言いたいなら、 直接 s = i と書かず、別の写像でつなぎます。
- 意味から複素数への埋め込み: g : M → ℂ (ℂ は複素数全体の集合)
ある意味 s0 ∈ M に対して g(s0) = i と定めれば、 「意味 s0 を複素平面に写したとき、その像が i になる」 という関係を持たせることができます。 ここで重要なのは、 s0 自体と i は別物であり、 写像 g を通じて対応づけられているという点です。
4. まとめ
ラカンの元の書き方では、 S や s の型が曖昧なまま 1/s や s2 が計算されていました。 上のように Σ(能記), M(意味), f, TS, g を明示すれば、 やりたかった「能記と意味の対応」「意味への作用」「虚数との対応」を すべて型付きの計算手続きとして書き直すことができます。