夏目漱石『文学論』全5編・24章について、各章の主張を一行でまとめました。
第一編 文学的内容の分類
文学を構成する要素とは何か。
第一章「文学的内容の形式」 — 文学は認識的要素Fと、それに伴う感情的要素fとの結合によって成立する。
第二章「文学的内容の基本成分」 — 感覚、本能、感情、観念など、人間のあらゆる心理経験が文学の材料となる。
第三章「文学的内容の分類及び其価値的等級」 — 文学の材料を感覚・人事・超自然・知識の四種に分類し、その価値を検討する。
第二編 文学的内容の数量的変化
文学的経験の強さや量は何によって変化するのか。
第一章「Fの変化」 — 認識の発達と対象の増加によって、文学の材料となるFは変化する。
第二章「fの変化」 — 感情は転置・拡大・固執などによって変化し、同じ対象にも異なる文学的効果を生む。
第三章「fに伴う幻惑」 — 連想や表現の工夫によって、対象の性質とは異なる感情や美的価値が生じる。
第四章「悲劇に対する場合」 — 現実には避けたい苦痛や悲哀が、文学では鑑賞の対象となる理由を考察する。
第三編 文学的内容の特質
文学と科学は何が違うのか。
第一章「文学的Fと科学的Fとの比較」 — 科学が一般法則を求めるのに対し、文学は個別の経験や感情を重視する。
第二章「文芸上の真と科学上の真」 — 文学の真実は事実の正確な再現に限らず、省略や誇張によっても成立する。
第四編 文学的内容の相互関係
文学の表現技法はどのように働くのか。
第一章「投出語法」 — 人間の感情や性質を外界の事物に投影することで表現を成立させる。
第二章「投入語法」 — 外界の事物の性質を人間の側に取り込み、認識や感情を表現する。
第三章「自己と隔離せる聯想」 — 自己の直接経験から離れた事物の連想によって、表現の範囲を広げる。
第四章「滑稽的聯想」 — 言葉や観念の意外な結びつきによって、洒落や機知などの滑稽を生む。
第五章「調和法」 — 異なる文学的材料を調和させ、相互の印象や感情を強める。
第六章「対置法」 — 対照的な材料の配置によって、緊張や強調などの文学的効果を生む。
第七章「写実法」 — 対象を具体的に描写することによって、現実に接するような印象を生み出す。
第八章「間隔論」 — 読者と作品世界との心理的距離が、作品への共感や鑑賞態度を左右する。
第五編 集合的F
文学の流行や歴史的変化はなぜ起こるのか。
第一章「一代に於ける三種の集合的F」 — 社会の意識を模擬・能才・天才の三類型に分け、模倣と独創の関係を説明する。
第二章「意識推移の原則」 — 集合意識は暗示によって変化し、その推移は習慣・類似・対照などに左右される。
第三章「原則の応用(一)」 — 意識が変化する自然な傾向と、倦厭が文学の流行を動かす仕組みを検討する。
第四章「原則の応用(二)」 — 読者の予期が文学的効果を生む一方、予期の固定化は表現の力を弱める。
第五章「原則の応用(三)」 — 典型派から浪漫派への変化など、文学史上の流行を集合意識の推移として説明する。
第六章「原則の応用(四)」 — 複数の文学的潮流は社会の注目を競い、作品の成功は才能だけでは決まらない。
第七章「補遺」 — 文学の変化には経済・政治・道徳も関与し、作品が後世に残るかどうかは価値だけでは決まらない。