2016年8月21日日曜日

底哩三昧耶不動尊聖者念誦秘密法|不動明王が大自在天(シヴァ)を調伏した密教経典の物語と意味

不空訳の密教経典『底哩三昧耶不動尊聖者念誦秘密法』では、不動明王がヒンドゥーの最高神・大自在天(シヴァ)を調伏し、仏陀の前に引き出す壮大な説話が語られます。本記事では物語の流れ、登場する諸尊の役割、密教における教義上の意義をわかりやすく解説し、関連経典や現代への示唆も紹介します。

国訳一切経 (印度撰述部 密教部 4) 


唐の不空が訳した密教経典「底哩三昧耶不動尊聖者念誦秘密法」(ちりさんまやふどうそんしょうじゃねんじゅひみつほう)には、大自在天(ヒンドゥー教の最高神シヴァ)を不動明王が調伏する説話がある。
大日如来が悟りを開いて仏陀になったとき、ありとあらゆる三界の生き物たちが集会に来たが、自分こそ三千世界の主と考え慢心する大自在天だけは招集に応じなかった。
大自在天は「持明者(インドの魔法を使う精霊、ここでは夜叉明王)が使いとして来るだろうが、奴らは不浄なものを嫌うから、不浄なものを幻術で作り出し四方に張り、その中にいれば持明者の明術も役に立つまい」として結界を張り、近寄れないようにした。
不動明王が大自在天を呼びに行くと不浄の結界で覆われていたので、不動明王は不浄金剛(烏枢沙摩明王)を召還し、不浄を食らい尽くさせた。そして、ただちに不動明王は大自在天を捕らえて仏陀の元へ連行する。
しかし大自在天は「汝らは夜叉に過ぎぬが、私は神々の王なのだ」と言い何回も逃げ続けた。仏陀が「断罪すべし」と命ずると、大自在天とその妃(ウマー)を踏み殺し絶命させたのだった。(これが降三世夜叉明王の姿である)
そして、大自在天の処分を尋ねると仏陀は「蘇生させよ」と言うので、法界生真言を唱えて復活させた。大自在天は喜び不思議がり「この夜叉は何者なのでしょうか?」と尋ねると、仏陀は「諸仏の主である」と答えた。大自在天は感激し、万物の全てにおいて尊い諸仏の上に、さらに諸仏の主がいることを知り、また彼が不動明王という「大王」のお陰で将来仏になれる授記をも得たのだった。

よくある質問(FAQ)

Q. 「底哩三昧耶不動尊聖者念誦秘密法」とは何ですか?
A. 8世紀に唐の高僧・不空が梵本を訳した密教経典で、不動明王が大自在天(シヴァ)を調伏する物語を中心に説かれています。
Q. 不動明王はどのような仏尊ですか?
A. 大日如来の化身とされる護法尊で、煩悩を断ち切り衆生を守護する役目を担います。
Q. 大自在天(シヴァ)は経典の中でどんな役割を果たしますか?
A. 三千世界の主を自称し慢心する大自在天が、不動明王に調伏されて仏陀に帰依することで、慢心を戒める教訓的存在となります。
Q. 経典が示す「調伏」とは何を意味しますか?
A. 他者や諸神を力で屈服させるのではなく、仏の智慧によって慢心や煩悩を鎮め、正しい道へ導くことを指します。
Q. この経典を読誦する功徳は?
A. 心の障りを焼き尽くす加護と、困難を突破する不動明王の護念を得られると説かれます。
Q. どこで原典や和訳を読めますか?
A. 『国訳一切経 印度撰述部 密教部4』などに全文和訳が収録されています。国立国会図書館デジタルや学術図書館でも閲覧可能です。
Q. 短い真言はありますか?
A. 「ナウマク・サマンタ・バサラ…」で始まる不動明王真言を三・七・二十一遍と区切って唱える方法が一般的です。
Q. 写経や拝読のおすすめ時間帯は?
A. 朝の護摩前や就寝前の静かな時間帯に、姿勢を正し心を落ち着かせて行うとよいとされます。